保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【主張】今次改定を振り返る 医療費削減とたたかおう

公開日 2016年04月25日

 2016年度診療報酬改定は、2014年度に続く2回連続のマイナス改定となった。また内容をみると地域包括ケアシステム推進の真意である医療費削減に躍起になっているようだ。

 個別の改定項目では、診察の基本である初再診料や外来管理加算の点数は据えおかれた。また、診療所の汎用点数である生化学的検査(I)の10項目以上の包括項目点数が引き下げられた。在宅自己注射指導管理料では「月28回以上の場合」が60点引き下げられた。これは糖尿病治療を熱心に行っている医療機関にとっては打撃である。一方、地域医療構想や地域包括ケアシステムを実現させるための改定があったが、在宅点数では、在宅時医学総合管理料等の算定方法が「同一建物居住者」から、その建物で何人に在宅医学管理をしているかで点数が変化する「単一建物診療患者数」に変更され、結果的に減収となる医療機関が多い。

 急性期を担う7対1一般病棟では、対象者に「手術後の患者」を加え、急性期医療の定義を「手術や急性期処置が終了して数日間」と、更に短く変更する下地が作られた。また、慢性期を担う療養病棟の在宅復帰機能強化加算を改定して、より「病院から施設・在宅へ」と患者が押し流される方向が強化された。果たして今次の在宅点数改定とあわせて、国・厚労省が狙う地域包括ケアシステムが実現できるだろうか。

 一方、外来では「かかりつけ医」機能を押し付けることで、外来受診を管理しようとしている。新設の認知症地域包括診療加算・診療料は、算定要件が「一処方につき内服薬が5種類以下かつ向精神薬が合計3種類以下」とするなど、前提となる地域包括診療加算・診療料では多剤投与減算規定の適用外としたのと逆行する算定要件であり、およそ非現実的である。また、施設基準に、患者の全ての受診医療機関・薬剤管理の把握を主目的とする地域包括診療加算等の届出が要件に盛り込まれたが、算定要件・研修要件が厳しく、届け出る医療機関は増えていない。そのうえに包括点数を新設しても無意味であり、「かかりつけ医の推進」は絵に描いた餅である。

 小児診療では、小児かかりつけ診療料が新設された。しかし、時間外対応加算(1または2)の届出が要件とされているほか、原則として一人の患者に一医療機関でしか算定できないなど、地域の小児医療の協力体制を崩すとの多くの指摘がある。

 一方で協会の粘り強い要望が実った事項もあった。恣意的な解釈により、3月までは、他院から退院後1カ月以内に特定疾患療養管理料を算定した場合の減点が増加していたが、今次改定で同管理料を他院退院後1カ月以内でも算定できることが明確化されたのは、その代表である。協会・保団連の全国会員アンケートや厚労省への改善要望が結実したといえる。その他、採血料、細菌培養同定検査、点滴注射、皮内・皮下および筋肉注射実施料が引き上げられたほか、鼻腔・咽頭拭い液採取料も新設された。

 今次改定では薬剤の飲み残し問題にメスが入ったが、30日超の処方を一律に制限する印象を与え、この間一貫して長期処方を進めてきた国の方針転換に現場が混乱している。窓口負担のない患者へも明細書を発行させて受診抑制を狙うなど、なりふり構わぬ医療費削減が顔を見せている。

 国民医療の持続向上には、私達が現場から制度の不合理を指摘し、改善要望することが肝要である。患者負担の軽減や現場に則した制度の実現のために、患者とともに踏み出そうではないか。現場の切実な声をぜひ協会にお寄せいただきたい。

(『東京保険医新聞』2016年4月25日号掲載)