保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【主張】亡国の、ウソつきTPP

公開日 2016年05月05日

 TPPは農業だけでなく、日本の医療も植民地化する。医薬品の特許権強化による高価格、危険な保険外診療の蔓延、営利企業の医業経営参入、下支えをする公的医療の崩壊、などが懸念されている。国連の人権委員会は2015年2月、TPP交渉参加国に対して、秘密交渉は国民の人権を無視するので、参加するべきではないと呼びかけた。

 TPPは、政治や社会のしくみを根本的に変えてしまう力を、国際的大企業に与えてしまう。米韓自由貿易協定には、「米国の植民地にする罠」が、ふんだんに仕掛けられていた。まずは有名なISDS条項(投資家対国家紛争解決条項、いわゆる毒素条項)である。韓国の制度や政策による損失があれば、企業が韓国政府を訴えて賠償させる。正当性ではなく、損失の有無だけが、世界銀行の秘密会議で審議される。

 次に「ラチェット条項」がある。政策を後戻りさせない規定であり、政治を束縛するものである。3つ目は「スナップバック(手のひら返し)条項」である。米国が不利になったとき、協定はとり消される。ところが、韓国には同様の権利が認められていない。こうした一方的な条項は、TPPにも盛り込まれている。米国が結ぶ貿易協定にはいつも、「協定のいずれかの条文が米国内の州法と異なるとき、その条文は無効とする」という規定がある。

 TPP交渉には甘利氏が当たってきたが、金銭問題のために辞任した。途中参加したTPP交渉では、譲歩カードを早々と出しつくしてしまった。さらなる譲歩を迫られて交渉が長引き、甘利氏はしばしば怒鳴ったり、机を叩いたりしていたといわれる。

 新しく経済再生相となった石原氏は、2012年の衆院選ではTPPに反対し、農協の政治団体である全国農政連の推薦をうけた。しかし当選後はTPP賛成側にまわっており、TPP早期発効に努力する決意を語った。

 和服姿でTPP調印式に出席した高鳥修一内閣府副大臣は、かつて自身のブログで「TPPは国家主権の放棄であり、平成の売国だ」と批判していたが、衆議院選挙後は賛成派に回っていた。高鳥氏は読んだこともないはずの合意文書に署名した。

 TPP協議が大筋合意に至ったのは2015年10月である。付属文書を入れれば、英文で8千500ページにもおよぶ合意文書は、ただちに英、仏、スペイン語でインターネットに公開された。しかし日本語の合意文書は公開されていない。日本国民には、真実が知らされていないのだ 日本国政府の楽観的な短い解説文がホームページに公開されているが、正文ではない。正文なしに条約は結べない。

 農産物重要5項目は、交渉のテーブルに載せないという国会決議があったが、3割の品目で関税が撤廃されるという。しかもTPP協定の発効後には、際限のない再協議が義務付けられている。TPP協定は、米国と日本の双方が参加しなければ発効しないが、米国の大統領予備選挙には、TPP協定を支持する候補者がいない。安倍晋三首相は、TPPを締結すれば日本のGDPが14兆円も増加するというが、従来の数字と大違いだ。

 いまNPO団体が、大筋合意文書の翻訳作業をおこなっているが、公式文書なしに国会審議ができるはずもない。秘密交渉で国民主権を侵し、公約違反、国会決議違反を重ね、虚偽の説明を行い、白紙委任の国際条約を強行採決するならば、うそで固めた亡国の行為といわねばならない。

(『東京保険医新聞』2016年5月5・15日合併号掲載)

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