いまさら聞けない「ゼロ税率」 ――税の矛盾は税制で解決を!医療の「ゼロ税率」を求める会員署名にご協力ください!

公開日 2015年11月25日

「ゼロ税率」を求める会員署名、もう送っていただけましたか?

まだという方、「ゼロ税率」と聞いてどういうものか想像がつかないという先生も多いかもしれません。今回は改めて、医療機関と消費税の関係を整理しておきましょう。

1.「損税」は、医療機関が課税事業者か否かに関係なく発生しています!

医療機関は仕入れにかかる消費税を「損税」として払い続けてきました。

「医療機関は消費税を払っていないじゃないか」と言われることがありますが、医療機関が損税を負担し続けることと、その医療機関が消費税の課税事業者であるか否かは別問題です。

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一般の小売店は、売上が1,000万円を超えると消費税の課税事業者となります。そして、売上にかかる消費税から、仕入れにかかる消費税を差し引いた差額を納税しています。これを「仕入れ税額控除」といいます。

一方、医療機関は売り上げの多くを保険診療費(非課税)が占めるため、どんなに保険収入が増えても課税事業者になりません。仕入れにいくら消費税を支払っても、収入が非課税のため仕入れ税額控除が認められず、払いすぎた消費税を回収する術がないのです

ワクチン・健診など、自費売り上げが1,000万円を超えると医療機関も課税事業者となりますが、このとき仕入れ税額控除できるのは自費売上に対応する分であって、保険収入の仕入れにかかる消費税は控除できません。

消費税3%の頃はあまり負担感がなかったかもしれませんが、5%、8%と上がるにつれ、医療機関の持ち出しは増えていきました。先生方のクリニックでもどれくらいの損税(仕入れ税額控除できない消費税)を負担しているか、ぜひ計算してみてください。

2.損税解消のために「ゼロ税率」を選択するメリットは?

私たちの主張する「ゼロ税率」とはどういうしくみで、どんなメリットがあるのか。

会員の先生方に深く浸透していないことは協会としても反省すべき点ですが、ゼロ税率にはメリットがたくさんあることを知っていただきたいと思います。

◇仕入れ税額控除できれば損税は還付される

ゼロ税率では、患者・医療機関に税負担は生じない ゼロ税率方式は言い換えると、「非課税売上に対して、みなし仕入れ税額控除を認めさせる」ということです。

「非課税売上の消費税(実質0%)-仕入れにかかる消費税(8%)」は当然マイナスとなり、医療機関は税務署から払いすぎた消費税を正当に還付してもらうことができます。

◇診療報酬・患者負担に転嫁しない

医療機関の消費税問題はこの間、日本医師会、厚労省でも話し合われてきましたが、抜本的な対策がとられないまま、根拠の薄い診療報酬への“補てん”という手法が採られてきました。診療報酬の増加はすなわち医療費の増大、保険料値上げ、患者負担の増加に直結します。

医療費がなぜ非課税かといえば、「社会政策上の配慮」から、消費税法でわざわざ非課税と規定されたのです。患者負担に跳ね返る診療報酬への転嫁するのは、法の趣旨に反します。

その点、ゼロ税率は消費税の中で還付が発生するため、医療費や患者負担に影響しません。

◇税の矛盾は税制で解決を――署名にご協力ください!

保険診療等に消費税をかけない――非課税の理念は、今後も守られるべき理念です。しかし、そのために医療機関が最終消費者となり、損税を負担し続けて消費税倒産をすることになれば、いったい誰が責任を取ってくれるでしょうか。

税の矛盾は、税制でこそ解決すべきです。「ゼロ税率」導入に向けて、一人でも多くの医療者の声を国会へ届けましょう。署名にご協力をお願いいたします。ホームページからもウェブ署名を受け付けています。

(『東京保険医新聞』2015年11月25日号掲載)