医療事故調制度の注意点 制度より患者との信頼が重要(葛飾)

公開日 2015年11月25日

葛飾支部は10月30日に支部例会を開催し、佐藤一樹先生を講師に医療事故調査制度の趣旨と運用上の注意点について学習会を開催。9人が参加した。

佐藤先生は冒頭「本制度は法律上、医療事故の再発防止だけを目的としている」、「医師法21条における異状死体の警察届出とは全く無関係の制度である」と強調。一方で、本制度を医療訴訟などの儲けにしたいと考える人もおり、制度上も付け入る隙が残されていると指摘した。

佐藤先生は、事故調査支援センターとなった「日本医療安全調査機構」の資料を紹介しつつ、「支援センターは中立・公正な検証のもとで透明性を確保する仕組みとされているが、透明性とは『誰に責任があるのか』ということであり、訴訟につながりかねない」と注意を促した。

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本制度は、院内で事故調査を行い、医療機関の管理者が「予期しなかった死亡・死産かつ、提供した医療に起因するもの」と判断した場合のみ、支援センターに報告が必要となる。死亡が予期されることを1)患者・遺族に説明していた、2)診療録に記載していた、3)医療提供後でも事情聴取の結果、医療従事者が予期していたとして管理者が確認した場合はセンターへの報告は不要だ。

石垣宏支部長は、「仮に報告をしなくても罰則規定はない。佐藤先生が強調したように、何らかの医療ミス・トラブルが発生した際には患者・遺族に説明をし、信頼関係を保つことが大原則だ。制度に振り回されず、これまでどおり患者目線を大切にした医療を守りましょう」と会を締めくくった。

(『東京保険医新聞』2015年11月25日号掲載)