協会、ウログラフイン投与事故で「嘆願書」 医療安全を図る視点での判決・説諭求める

公開日 2015年07月25日

東京保険医協会は6月22日、国立国際医療研究センター病院の造影剤ウログラフイン投与事故に関して、当事者である医師の再出発、さらには医療安全のために、「寛大な判決と説諭」を求める嘆願書を東京地裁に提出した。また、7月7日に司法記者クラブ、9日には厚生労働記者会で会見し「嘆願書」を提出した経緯や背景を説明した。

協会の嘆願書は、亡くなった患者のご遺族に哀悼の意を表した上で、過去に5人の医師が業務上過失致死罪で有罪になっているが、同様の誤投与が繰り返されていることから、「個人の責任を追及しても、再発防止には全く役に立たないことは明らか」と指摘。

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複雑多様化する医療のなかで医療安全を個人の責任で守ることには限界がある。事故原因をヒューマンファクターに求めるのではなく、システムエラーという観点から検証し、再発防止を図ることが重要であることを踏まえて、東京地裁に「寛大な判決」を求めた。

さらに、日本の医療安全管理体制やリスクマネジメントの遅れ、さらには医療事故調査における医療者の人権擁護の劣悪さにも言及している。

WHOは、非懲罰性・秘匿性・監督官庁からの独立・システム指向性を柱とした事故調査を推奨しているが、わが国ではこれらの対極にある「説明責任」と「責任追及」を目的とした事故調査が主流となっているのが現状だ。10月から医療法上の制度として医療事故調査制度がスタートしても、「本件事件のように過去の事案については、重大かつ繰り返し発生している類型であっても、全く無策」であり、「この先も同様の事件の発生を法律や制度として防御するシステムが日本にはない」不条理を、今回の判決で明らかにするよう求めた。

(『東京保険医新聞』2015年7月25日号掲載)