民主主義の危機 審議不十分の暴走国会――医療改革関連法が成立

公開日 2015年06月05日

5月27日参院本会議で「医療保険制度改革関連法案」が可決成立した。同法案は、1)入院時食事療養費の自己負担を1食260円から460円に引き上げ、2)紹介状なしの大病院受診時の定額負担の導入(5,000円~1万円)、3)後期高齢者医療の保険料「軽減特例」を廃止、4)混合診療の全面解禁につながる「患者申出療養」の創設、5)都道府県に公的医療費削減の役割を担わせるとともに保険料引き上げ、徴収強化につながる「国保の都道府県単位化」、6)国・都道府県が定める医療費適正化計画に医療費目標を設定―などの改悪メニューが並んでいる。

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5月21日に開催された国会内集会「廃案しかない! 医療保険制度改革関連法案」には、全国から約180人が参加した。フロアからは「患者申出療養」の危険性を告発する発言が相次いだ。薬剤師は2002年のイレッサ薬害を例に、「当時、申請から承認までわずか5カ月という短期間の審査で異例の販売開始となったイレッサ。さらに保険適用が開始されるまでのおよそ2カ月間、保険診療とは別に自費による治療を受ける初の“特定療養費制度(当時)”が適用された。実質的に混合診療を認めたかっこうだが、藁にもすがる思いで治療を受けた難治肺がん患者のうち、わずか半年間で180人が死亡するという悲惨な結果をたどった。国とメーカーへの賠償を求めた訴訟についても、2013年の最高裁で敗訴が確定したことで、すべては“患者の自己責任”となった格好だ。第2、第3のイレッサ薬害を絶対に繰り返してはならない」と訴えた。

協会・保団連は終日、難病の患者団体なとどともに徹底した審議と廃案を求めて議員要請を行った。田村智子議員(参・共産)に協会が取り組んでいる「患者負担増に反対する患者署名」のうち、追加の1,300筆を提出した。

衆議院では安倍首相が最重要法案と位置づける他国での武力行使を可能とする安全保障法案(戦争立法)が審議中だ。「医療保険制度改革関連法案」は審議不十分のまま、わずか1カ月余りで成立した。小選挙区制による虚構の多数で、民意とかけ離れた暴走を続ける安倍政権。国民の命と民主主義、国民皆保険制度を守る運動をいっそう強めていこう。

(『東京保険医新聞』2015年6月5日号掲載)