別紙様式14 10月診療分からの添付必須化 その撤回を強く求める

公開日 2014年09月05日

猫の目のように変わる通知解釈

今次改定では、とりわけ在宅医療をめぐる通知の解釈が猫の目にように変わったため、診療現場はかつてない混乱に巻き込まれた。

3月5日の点数告示には「後日示される」とだけ通知に記載され、新点数が実施される直前の3月28日になってようやく示された『別紙様式14』を在宅患者訪問診療料2の「同一建物居住者の場合」を算定する患者全員に記載し添付することが求められた。しかも、施設ごと・訪問診療日ごとに作成し訪問日数分を添付しなければならない。

患者本人の「氏名」「要介護度」「認知症生活自立度」「住所」「訪問診療が必要な理由」、さらに同日に同一建物で訪問診療を行った全患者の訪問診療開始時間・終了時間、訪問場所(住所及び名称)等までも紙の用紙に記載させるという、煩雑極まりないものだ。さらに、明確な記載要領は示されなかった点も混乱に拍車をかけた。

記載すべき『別紙様式14』の枚数は在宅専門医療機関によっては、月に数百枚に達する。請求事務に直接関係のない患者個人情報の記載の強要、電子請求が日常化しているなかでの紙媒体での添付など事務のあまりの煩雑さから、協会は4月16日、撤回を求める要望書を厚労相等に提出した。

こうした反対の声に押されてか、厚労省は4月23日の事務連絡で「レセプトに同様の内容を症状詳記すれば電子請求を可能」とした他、5月7日の事務連絡ではついに「9月診療分までは添付不要」とした。しかし、添付不要とする取り扱いを明示した通知の発出が5月連休の後であったため、多くの医療機関では連休返上で作成に当たる結果となった。

当面9月診療分までは添付が省略された『別紙様式14』だが、患者本人以外の同一日・同一建物に訪問診療、あるいは往診を行った別など患者情報が記載される点が個人情報保護法違反との指摘もある。

また、「訪問診療料を算定した患者を記載する」となっているのに、往診した患者も記載させる点も不合理だ。

さらには、「訪問人数合計」欄には在宅医療を行った人数を記載することとされ、訪問診療料1を算定した患者もカウントするよう示されている。しかし厚労省の説明では、訪問診療料2と往診料を算定した人数を書くこととされ、整合性を欠く内容となっている。

加えて『別紙様式14』には「保険者番号・記号番号」の記載欄がないため、審査支払機関では紙媒体で提出された場合、電子レセプトとの突合が不能となるという問題も生じている。

10月診療分からは添付必須に 記載不備は返戻も

東京都国保連合会は、10月以降、レセプトに添付される『別紙様式14』の記載に不備がある場合、レセプトともども返戻せざるを得ないとしている。例として「訪問診療が必要な理由」欄について、一律同様の内容ではなく患者個別の必要性を明記するよう求められる。

在宅レセプトは高点数のものも多く、万が一『別紙様式14』の記載によってレセプトが数十枚単位で一度に返戻されることになれば、医院経営を左右しかねない重大問題となろう。また、審査機関側も限られた職員数で処理しなければならないため、その対応に苦慮させられると思われる。

このように日を追うほど『別紙様式14』の問題点が明らかになっている。協会は5月19日に再度『別紙様式14』提出義務付けの撤回を求める要望書を厚労省等に提出した。

在宅医療に大打撃と不信感 『別紙様式14』撤回と不合理是正を

4月改定ではその他にも在宅点数の大幅な引き下げが行われ、「在宅医療から撤退せざるを得ない」という声も多数あがっている。

一方、4月改定で7対1入院基本料の算定要件がより厳しくなり、入院患者が急性期病床からの退院を余儀なくされるケースが今後増えることも懸念される。しかし、在宅医療がこうした状況では、退院患者の十分な受け皿には到底なりえない。

8月20日、保団連は「新点数不合理是正」を求める要請懇談を厚労省当局と実施した。

懇談のなかで『別紙様式14』のあまりの矛盾に厚労省も様式の見直しに着手していることが明らかになったが、われわれ協会の要求はあくまで『別紙様式14』の即時撤回である。そして、大幅に引き下げられた在宅点数を3月以前のレベルに速やかに戻すよう強く求めるものである。

(『東京保険医新聞』2014年9月5日号掲載)