【談話】化血研による血液製剤の不正製造とその隠ぺいについて

公開日 2015年12月14日

2015年12月14日
東京保険医協会
会長 拝殿 清名

 一般財団法人化学及血清療法研究所(以下「化血研」)による血液製剤の不正製造を調査していた第三者調査委員会の報告書が、2015年12月2日に公表された。われわれが患者に用いる医薬品が40年間も不正に製造され、しかも会社ぐるみで不正製造の事実を隠し続けていたという内容だ。

 報告書は、不正製造とそれらの隠ぺいは「製品の安全性及び患者の安心を優先すべき製薬会社としてあってはならない重大な違法行為である」とし、不正製造は「血漿分画部門では、遅くとも1974年頃より行われて」おり、とりわけ隠ぺいに関しては「経営トップの指示ないし承認のもと、20年以上にわたり、虚偽の製造記録を作成」したもので、「常軌を逸した隠ぺい体質が根付いていたといわざるを得ない」と、化血研を指弾した。

 一方、血漿分画部門内において、徹底した情報統制がなされていたものの、1996年9月、経営層が血漿分画部門の不正製造の事実報告を受けるなど、一部の所員に違法状態を解消しようとする動きがあったことも報告されている。しかし、経営層は改めなかったのである。この年の3月には薬害エイズ訴訟が和解している。非加熱製剤を製造販売していた化血研が責任を認めて謝罪し、文書で再発防止を誓っていただけに、経営層が不正製造とそれらの隠ぺいを継続したことは許しがたいものがある。

 注目すべきは、1980年代から2000年代にかけて、血漿分画部門の売り上げが化血研の大半を占めるに伴い、血漿分画部門出身の幹部が大きな発言権と人事権まで掌握するようになったことだ。不正製造は「化血研が、血漿分画部門の責任者による強いトップダウンの下、血漿分画製剤の早期製品化や安定供給を最優先する方針で開発・製造を急いだことに起因する」と報告書が指摘しているように、不正製造とそれらの隠ぺいによって、血液製剤の早期上市・生産を先行させてきた利益優先の体質が問題の根幹にある。

 今回の事件で出荷自粛となり、化血研が大きなシェアを持つ血液製剤やワクチンが入手困難となる事態が生まれている。厚労省は化血研が製造する血液製剤、ワクチンの安全性には問題がないと結論している。安全なら国の厳重な規制を緩めて、製造現場の「創意・工夫」が柔軟に行えるようにすべきではないかとの声もある。

 しかし、製薬会社がルールを無視して、「早期上市・生産」を優先させることは、あってはならないことだ。化血研が秘匿していた「ノバクトM」へのへパリン添加についても、有害性は少ないといわれているが、隠ぺい体質は再び大事故につながる恐れがあり許しがたい。薬害エイズ事件に関わり、さらに不正製造・偽装・隠蔽などを引き起こすような、独善的な体質を変えられない企業には市場からの撤退を求めるべきであろう。

 また、長期間にわたる不正製造や虚偽の対応、隠蔽を見抜けなかった国の責任も大きい。これまでのような事前通告の査察は厚労省の怠慢であり、抜き打ち検査など厳しいチェック体制の構築が必要だ。そして何より、1社の不祥事がワクチンの流通をストップさせてしまうような脆弱な供給体制の改善を強く求めたい。

以上

【談話】化血研による血液製剤の不正製造とその隠ぺいについて[PDF:125KB]