大飯原発の再稼働容認に異議あり

公開日 2012年04月17日

2012年4月17日
東京保険医協会
会長 拝殿 清名
政策調査部長 須田 昭夫

 4月13日、野田政権は、関西電力大飯原発3、4号機の安全性が最終確認されたとして再稼働を認める発表をおこなった。

 再稼働の判断基準になっている対策は、原発推進派の科学者たちによって作られており恣意的なものである。関西電力が示した85項目の対策のうち33項目は未実施であり、事故時に放射性物質の飛散を減らす排気設備の設置は3年先の2015年度になるという。事故発生時に作業が可能な「免震事務棟」の完成は、前倒ししても2015年だという。

 そもそも福島原発事故については徹底的な究明がなされていない。地震と津波がどのように関与したかさえ十分に解っていないのだ。これで原発の「安全性」が確認されたといえるのだろうか。われわれは政府の原発再稼動宣言に抗議するとともに、その撤回を求めるものである。

 4月に発足予定だった原子力規制庁はまだ発足しておらず、原発推進一直線の姿勢と数々の不手際が批判された原子力安全委員会が存続している。原子力安全委員会で原発の新たな安全基準を検討した「原子力安全基準・指針専門部会」構成員29名のうち、6名が原発業界から多額の寄付を受けていたことも明らかにされ、中立性が問われている。原子力を監視する体制はないに等しい。

 枝野経済産業大臣は「基準をおおむね満たしている」と語ったが、言葉が軽すぎる。ひとたび悲惨な事故が起これば取り返しがつかないことをこれまでの事故が示しており、いずれも解決の目処が立っていない。「おおむね」という発想は危険すぎる。また「安全性は技術的専門的に判断してもらうが、必要性の判断は政治家がする」という考え方は非科学的な安全神話を作り上げた産業優先の誤りを繰り返すものである。

 「ストレステスト」の1次評価は単なる机上の計算であり、安全性を保障していない。そして2次評価はまだ行われていない。安全対策が完成していなくても再稼働してよいという政府の判断は、原発被害に苦しむ国民の生活と生命を、電力業界と産業の利益の犠牲にするものであり、TPP参加、消費税増税、福祉切り捨てなどに走り、新自由主義を信奉する政権の本性をあらわすものである。

 日本は原発以外の発電能力の総和を、消費電力が上回ったことがない。この1年間で、日本はすべての原発を停止しても電力が不足しないであろうことを、我々は知ってしまった。もしも電力が不足するとすれば、それは猛暑の1週間、午後の数時間にすぎない。民間非営利団体の環境エネルギー政策研究所(ISEP)の報告によれば、ゆるやかな節電の条件のもとでは、原発をすべて停止しても17%以上の供給余力を作ることが可能だと言う。そもそも日本は原発に依存して過剰に電力を消費し、原発共同体の利益に貢献しすぎた。今後は合理的な省エネルギーと自然エネルギーの開発に邁進し、安全な日本と地球を守らねばならない。政府は先見の明を以て脱原発を決断するべきである。

大飯原発の再稼働容認に異議あり[PDF:110KB]