保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

「一体改革関連法案」衆議院可決に抗議し、参議院での徹底審議と廃案を求める

公開日 2012年07月06日

2012年7月6日

内閣総理大臣 野田 佳彦 殿
厚生労働大臣 小宮山 洋子 殿
財務大臣 安住 淳 殿

東京保険医協会
会長 拝殿 清名

 6月26日午後、社会保障の維持を口実に、消費税増税等のさらなる負担を国民に押し付ける、一体改革関連8法案が衆議院で可決された。国民の声の代弁者であるべき立場にもかかわらず、多数の国会議員が賛成へと票を投じたことには義憤の念を禁じ得ない。

 国民所得が減少しているのはどのような統計を見ても明らかであるなかで、生活必需品に対する軽減税率のような配慮が全くなされないままに、消費税を増税させることを一体どれほどの国民が容認できるのであろうか。また、医療機関においては医薬品・医療材料、医療機器などの仕入れに際し、医療費に転嫁できない消費税の負担を強いられる「損税」問題があり、このまま増税されれば、医療機関の経営に重大な影響を及ぼし、地域医療の崩壊につながりかねない。

 増大する負担は消費税だけではない。同時に成立した「社会保障制度改革推進法案」では「自助」・「共助」が全面的に要求され、国の責任である「公助」は大きく後退している。これは日本国憲法第25条に規定される生存権をないがしろにし、権利としての社会保障を国民から取り上げる内容である。特に生活保護制度に関しては、一部の不正受給を取り上げて、まるで全てが悪であるかのように言い立てる風潮にある。生活保護は憲法で保障される国民の権利であり、自助・共助だけに頼るべきものではなく、生活保護制度の基本理念に則って議論されなければならない。

 推進法案第2条2号では『税金や保険料を納付する者の立場に立ち、持続可能な制度を実現する』とされている。これでは税金・保険料を納付する余裕のない低所得者、生活保護受給者は社会保障から抜け落ちて行く事になる。保険料を納付したとしても、第6条、第7条はそれぞれ医療保険、介護保険制度分野において、療養の範囲を「適正化」することを明記しており、給付が抑制されることは免れない。財政健全化のために社会保障費削減を達成したとしても、国民の生活を守ることができなければ、社会不安や道徳的な問題につながり、結局は経済成長を鈍化させ、国民がさらに疲弊するだけである。国家の責任の下で、誰もが健康で、安心して暮らしていける社会を作るべきである。

 また推進法案第2条4号によれば、社会保障給付に要する公費負担の費用は、消費税及び地方消費税の収入を充てるものとしている。税収入を一定の使途に限定することは財政の柔軟性を失わせ、予算配分は非効率となることは財政原則の基本である。推進法案はその原則を無視し、現在実施されている公費負担も含め、消費税収の範囲によって給付を狭めようとするとともに、公費負担医療の充実・維持を消費税増税の言い訳にしようとしている。このようなペイ・アズ・ユー・ゴーの原則に基づき、公的責任を矮小化させようとする政府の態度は、国民の命と健康を守る立場を放棄するものであり、我々保険医は断じて許さない。

 さらに、推進法案第4条は、社会保障制度改革を具体化するために社会保障制度改革国民会議を新設するとしているが、20名の委員を首相が任命することや、国会議員が兼任可能とする取り扱いでは、政府の既定路線をなぞるばかりである。そもそも、このような重大な問題については全国民の代表である国会において議論をすべきであり、民主党内閣という限られたグループの中に国民会議を設置することには全くの合理性を見出すことができない。

 以上のような観点から、東京保険医協会は一体改革関連法案に断固として反対し、参議院での徹底審議と廃案を求める。

「一体改革関連法案」衆議院可決に抗議し、参議院での徹底審議と廃案を求める[PDF:129KB]

PDFの閲覧にはAdobe System社の無償のソフトウェア「Adobe Reader」が必要です。下記のAdobe Readerダウンロードページから入手してください。

Adobe Readerダウンロード