水俣病被害者救済特別措置法による「救済」申請の打ち切り撤回を求めます

公開日 2012年07月26日

2012年7月26日

内閣総理大臣
野田 佳彦 殿

東京保険医協会
公害環境対策部
部長 赤羽根 巖

 政府は、水俣病被害者救済特別措置法(以下、「措置法」)による「救済」申請を7月末日で打ち切ろうとしています。これは多くの水俣病被害者を「救済」の対象から切り捨てるものであり、到底容認することはできません。

 本来、企業活動が人や環境に被害をもたらした場合、加害企業は真っ先に情報提供を行い、被害状況を把握して、被害の回復やその賠償などに当たらなくてはなりません。また、そのような企業が加害責任を果たすように監視し、指導するのが国や行政の役目であるはずです。

 しかし「措置法」によって「救済」を受けようとすると、罹患に当たって一切責任のない被害者本人が医師から「証明」をもらい、水俣病の認定申請をしなければなりません。

 その申請手続きさえ、政府は7月末で締め切ろうとしています。

 申請受付は2010年5月から始まりましたが年々増加しています。今年6月末までに新潟、熊本、鹿児島の3県で計5万7,589件に達し、政府が2月に申請期限を発表してからは毎月1,000件の申請となっています。また、熊本、鹿児島の医師らが本年6月末に実施した一斉検診では、受診者約1,400人のうち9割に感覚障害などの水俣病の症状がありました。これらのことは水俣病の被害者がいまだに数多くいることを示しています。

 水俣病はさまざまな障害があります。暴露の量や時期、そして個々人の感受性によっても異なります。そのため一人ひとりをしっかり診察して診断をつけ、重症度を判断しなければなりません。また、胎児性水俣病などを含め世代間を通しての影響など解明しなければならない課題が数多く残されています。

 水俣病の公式確認から56年もの歳月が過ぎました。しかし、加害企業や政府・行政が水俣病の被害実態の調査や研究を怠ってきたため、健康被害の全容が解明されていません。そのため、今後も長期にわたる住民の健康調査や研究、そしてなによりも被害者の救済が引き続いて必要なことは明らかです。

 よって、水俣病被害者救済特別措置法による「救済」申請の7月打ち切りを撤回するとともに、汚染・被害の全体像を明らかにし、水俣病による全ての被害者を補償するという加害企業と国・行政に課せられた責務をまっとうするよう求めます。

水俣病被害者救済特別措置法による「救済」申請の打ち切り撤回を求めます [PDF:84KB]