子どもたちに必要なワクチンのすみやかな定期接種化を求める要望書(田村厚労大臣宛て)

公開日 2013年01月09日

住んでいる地域で接種費用の格差が生じないよう国策による制度構築を求めます

2013年1月9日

厚生労働大臣 田村 憲久 様

東京保険医協会
会長 拝殿 清名

 

 日夜、公衆衛生の向上や国民の健康増進へのご尽力に心から敬意を申し上げます。

 さて、わが国はWHO(世界保健機関)が推奨し、諸外国では当たり前に接種されているワクチンの多くが任意接種となっているため、接種を希望しても高額な接種費用がかかり、接種をあきらめてしまう家庭が少なくありません。「ワクチンで防ぐことができる病気はワクチンで防ぐ」ことは世界の常識です。私たちは国の制度として一日も早く、世界標準であるワクチンを無料で接種できる「定期接種」とすることを強く求めます。

 平成22年11月から施行されている子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業により、細菌性髄膜炎を予防するヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン等について全国の多くの自治体で保護者負担をなくし、接種しやすい環境が整えられています。しかし、この事業も平成24年度までの時限制度であるため、25年度以降は接種が継続できるのか、多くの保護者や医療従事者、自治体職員等は不安な気持ちで情勢を見守っています。また、東京都23区等ではこれら3ワクチン接種を希望しても高い接種費用がかかるため、接種が低迷する事態が起きています(別紙一覧参照)。そして、多くの自治体では主治医が居住地外の医療機関であっても県内ならば公費負担で接種を行う相互乗り入れ制度を導入し、接種環境の整備を行っていますが、残念ながら東京都では、例えば、三多摩に住む子どもが特別区の主治医から接種を受ける場合、定期接種であっても自己負担をしなければならない現状があります。私たちは全国どこの地域に住んでいても、家庭の経済状況や受けとる情報などによって格差が生じないよう、希望する子どもたちに必要なワクチンが無料で接種できる制度を求めます。

 こうした国民の声を受けて、7つのワクチンを定期接種とする方向で予防接種法改正の準備を進められていると拝察いたします。私たちも早急に法案を成立させ、希望する子どもたちに必要なワクチンを接種できる環境整備を求めます。ただ重要な点として、法改正の際には接種費用の負担のあり方として現在の規定(区市町村支弁)を残したままでは、各自治体の財政状況によって住んでいる地域で子どもたちの命に格差が生じてしまう可能性があります。20年といわれるわが国のワクチンギャップを解消するために、今こそ全国で等しく、無料で接種できるよう法整備すべきだと考えます。

 感染症対策は国防の重要な施策です。予防接種費用の財源確保や予防接種施策を評価・検討する仕組み(日本版ACIP)の設立などを下記の点について要望します。

  1. ヒブ、小児用肺炎球菌、子宮頸がん予防ワクチンをはじめ、水痘、おたふく、B型肝炎、ロタウイルスワクチンを一類疾病の定期接種化するとともに、これらのワクチンの定期接種化は、国による財政措置と一体で行っていただいて、子どもたちに等しく接種する環境を整えてください。
  2. 定期接種化となるまでの間は現行の子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業を継続し、ヒブ、小児用肺炎球菌、子宮頸がん予防ワクチンを接種できるよう施策を講じてください。
  3. 予防接種施策を評価・検討する仕組み(日本版ACIP)を設立してください。
  4. 里帰り出産や施設療養中の小児も含め、全国どこにいても子どもたちが公費で予防接種を受けることができるようにしてください。

以上

子どもたちに必要なワクチンのすみやかな定期接種化を求める要望書~住んでいる地域で接種費用の格差が生じないよう国策による制度構築を求めます~[PDF:163KB]