保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

日本の医療制度を形骸化し、国民の生活と民主主義、さらには国家主権を脅かす TPPへの交渉参加の表明に抗議します

公開日 2013年03月18日

2013年3月18日

内閣総理大臣 安倍 晋三 殿

東京保険医協会
会長 拝殿 清名

 

 3月15日、安倍晋三首相はTPP交渉への参加を表明しました。わたしたちは国民の命と健康を守る保険医の立場から、TPP交渉参加表明に抗議し、その撤回を求めます。

 TPPは、これまでの貿易交渉とは全く異なり、「非関税障壁の撤廃」を原則としています。これは、輸出入品の関税撤廃のみならず、TPP交渉国の中で圧倒的な支配力を持つ米国の企業が他国で最大の利益を上げられるように、協定参加国内のあらゆる分野で、規制の緩和とその撤廃をめざすことが狙いです。

 これまで米国は、医療の分野で混合診療の全面解禁、営利病院の経営、民間医療保険の販売、医薬品・医療機器の特許権強化などを日本に要求してきました。日本の診療報酬・薬価基準という公定価格に左右されない自由診療を公的医療保険と併用させる混合診療の全面解禁は、医療技術、医薬品・医療機器の特許を独占する米国に莫大な利益をもたらします。自由診療部分での収益を上げるために、画期的な薬剤や検査、治療技術を意図的に保険収載せず、高価格を維持することになれば、多くの国民がその恩恵を受けられなくなり、公的医療保険の給付水準を著しく低下させてしまうでしょう。

 TPP参加によって、このような医療の営利化・市場化が強力に推し進められれば、WHOが世界一効率的に健康と長寿を達成したと評価する日本の医療制度が崩壊してしまうおそれがあります。安倍首相は国民皆保険制度を「断固守る」と言明していますが、たとえ国民皆保険制度の名前だけが残ったとしても、それは自由診療を下支えさせられる制度として存続するだけです。

 TPPには投資先の国や行政機関の政策で、企業や投資家が損害を被ったと判断した場合はその国を提訴できるISDS条項や、一度合意した規制の緩和や撤廃は二度と元に戻せないというラチェット条項など、国家主権を制限して多国籍企業の活動を優先する内容となっています。

 さらに、TPP交渉に途中から参加したカナダとメキシコは、参加表明した後に知った既存の取り決めへの発言権もなく、交渉を打ち切る権利もない状況に置かれていることが報じられています。TPPは協議内容も合意した協定条項も、TPP締結後4年間は秘密にされる秘密協定なのです。これまでの協議内容と既に結ばれた協定条項が秘密にされているため、「守れるものが何かさえわからない」のです。それにもかかわらず、安倍首相が「守るべきものは守る」と強弁して、TPP交渉参加を表明したことは無責任極まりないといわざるを得ません。

 TPP交渉への参加には、すでに45府県議会が反対もしくは慎重にすべきとの意思表明をしています。さらに過半数を超える国会議員が「TPP反対」を求める請願の紹介議員になっています。国会内外のこのような声を無視することを誰が要求しているのでしょうか。民主主義とはなんなのでしょうか。今回の首相表明は暴挙といっても過言ではありません。

 わたしたちは「いつでも、どこでも、誰でも、必要な医療が安心して受けられる」国民皆保険制度を守る立場から、日本の医療制度を形骸化し、国民の生活と民主主義、さらには国家主権を脅かすTPPへの交渉参加の首相表明に断固、抗議するとともに、表明撤回と参加自体を断念するよう強く求めるものです。

以上

日本の医療制度を形骸化し、国民の生活と民主主義、さらには国家主権を脅かすTPPへの交渉参加の表明に抗議します[PDF:99KB]

 

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