公開日 2013年04月04日
2013年4月4日
東京都選出国会議員 各位
東京保険医協会
政策調査部長 須田 昭夫
貴職におかれましては日頃より、国政の重責を果たしておられることに、心より敬服いたしております。私ども東京保険医協会は、東京都内で保険医療に携わる開業医と勤務医の団体です。全国組織は保険医団体連合会として、国民の心身の健康、生活、尊厳のための活動を行っております。
さて政府は2013年3月22日、日本国内すべての個人と法人・団体に付番して社会保障、税等を一元的に管理する「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(共通番号法案)を国会に提出しました。政府は15年度秋ごろに識別番号を全国民に通知し、16年1月から顔写真付き個人番号カード(ICカード)の交付を行って、行政機関での利用を開始する計画と伝えられています。
「共通番号」は当初、消費税を低所得者に還付する「給付つき税額控除」のために不可欠とされていました。しかし主に欧州で採用されているこの制度は、所得税非課税の所得者に対する現金給付であり、財源は所得税です。低所得者が支払った消費税を合算して還付することは、もともと不可能でした。自公政権では消費税還付ということばは消えました。いま自公政権が最も強調しているのは社会保障費の自己負担を軽減する「総合合算制度」ですが、今でも医療と介護の自己負担額に上限を設ける「高額医療・高額介護合算制度」が共通番号なしで円滑に運営されており、共通番号を導入する必要性は全くありません。
共通番号を利用してきた米国では「なりすまし」被害が2年間で1千万人、年平均500億ドルにのぼり、国防総省が共通番号を離脱しました。韓国では4年間で1億2千万人分の個人情報が流出しています。同国の人口は5000万人ですから一人につき2回以上流出していることになりますが、止まる様子はありません。ドイツやオーストリアでは漏えい防止のために、行政分野毎に異なる番号を使用しています。多くの個人情報を一つの番号で管理すれば、プライバシーが漏えいする危険性が高まるのは当然のことです。
共通番号法案によれば法施行3年をめどに、共通番号を医療情報と連結し、民間企業にも利用させるとしています。これはきわめて危険なことと言わざるを得ません。なし崩し的に利用拡大する計画はやめてください。
共通番号システム構築の費用は3000億円とも6000億円ともいわれ、ランニングコストは毎年300から600億円と推定されますが、明確な数字は提示されていません。これらの費用は各自治体、団体の負担となるようですが、ICカードに関与する民間企業にも費用負担が生じます。費用ばかりかかる、箱もの事業と化す恐れはないのでしょうか。
社会保障・税一体改革は、徴税強化と給付削減であり、国民には二重の負担増です。そのような目的のために巨額の費用がかかるICカードを、国民が歓迎するとお考えでしょうか。国民は行政の無駄遣いを悲しんでいます。共通番号法案は廃棄してください。
以上