保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

共通番号法の衆議院可決に抗議し、参議院での徹底審議と廃案を求めます

公開日 2013年05月09日

2013年5月9日

内閣総理大臣 安倍 晋三 殿

東京保険医協会
会長 拝殿 清名

 5月9日、共通番号法案が衆議院を通過しました。今回の法案は前政権の法案に比べて共通番号の活用を、官民ともに拡大しようとするのが特徴です。政府は、共通番号によって行政手続の添付書類が不要となり、ワンストップサービスが可能になるという、利便性を強調しています。しかし日常生活において、ほとんどの行政手続きは一つの役所内で完結しており、複数の役所が関与する手続きはきわめて稀です。まれなケースを挙げて利便性を説いても説得力がありません。

 また従来、消費増税を低所得者に還付するという「給付付き税額控除」や、社会保障の自己負担を軽減する「総合合算制度」には共通番号が必要だといってきましたが、いずれも不可能または共通番号の必要性がなく、今回の法案では言及されなくなりました。共通番号によって「より正確な所得把握」が可能となり、「公平・公正な社会」が実現するとされていますが、「社会保障・税番号大綱(2011)」は、「全ての取引や所得を把握することは非現実的」と告白しています。税のことを言うならば、ゆきすぎた企業減税、大企業への無駄な補助金、税率の低い資産・配当所得や1億円以上の高額所得、などを見直すべきです。

 重大なことは「共通番号」が税・社会保障の一体改革の道具として考えられていることです。社会保障給付費に上限を設け、税や保険料の負担に応じて社会保障を給付する、「社会保障個人会計」の手段となることです。所得の少ない人たちは、ますます社会保障から遠ざけられることになります。

 社会保障給付の抑制に使われる共通番号がIT犯罪を生むことには、韓国の先例があります。最近の4年間で、人口の2倍以上にあたる1億2,000万人分の個人情報が流出し、成りすまし犯罪が横行したり個人のプライバシーを侵害しています。さらに国民番号と行政情報を紐づけする「社会福祉統合管理網」によって、国民一人ひとりの所得と扶養義務者が補足され、十数万人におよぶ生活保護の打ち切りが行われました。「共通番号」は低所得者を掬い上げるのではなく、社会保障の給付対象を仕分け、切り捨てる道具として使われているのです。このような事態を日本で許してはなりません。

 共通番号や国民背番号は世界の流れではありません。IT犯罪防止のために、情報をいかに分散管理するかということが注目されるようになってきています。社会保障番号が「共通番号」として使われている米国では成りすまし犯罪が横行するため、国防総省は独自番号に変えました。英国では法制化されたICチップ付き国民IDカードの導入が2010年の総選挙で廃止されました。英国も含めて、フランスやドイツ、オーストリアでは、税や社会保障など様々な行政分野の個人番号を独立させて、個人情報の「紐付け」を厳に戒めています。また、行政などに集中した個人情報の利活用も、独立した第三者機関を設けて厳重に監視しています。

 行政分野だけでなく、民間での利活用をも視野に入れた共通番号法案は、このような「情報」先進国の流れに逆行するものであり、電子化された国民の個人情報を、漏洩や目的外使用、国民監視やIT犯罪の危険に晒しかねないものです。初期費用3,000億円、年間の運用経費が数百億円という税金の無駄遣いをやめ、共通番号制度の導入は中止すべきです。

 以上のように、私たちは国民のプライバシー権を危うくするとともに、社会保障の削減の道具となる共通番号法案の衆議院通過に抗議します。そして参議院では徹底審議の上、廃案とし、共通番号制の導入を撤回するよう求めるものです。

以上

共通番号法の衆議院可決に抗議し、参議院での徹底審議と廃案を求めます[PDF:134KB]

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