保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

社会保障制度改革国民会議の審議のための意見

公開日 2013年05月15日

社会保障制度改革推進法第2条(基本的な考え方)及び
第5条から第8条(改革の基本方針)を踏まえた社会保障制度改革についての意見

2013年5月15日
東京保険医協会

第一章 総則
(基本的な考え方)
第二条 社会保障制度改革は、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。
一 自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していくこと。

〈意見〉
○ 「自助・共助・公助の最適バランス」として、「自立と家族相互、国民相互の助け合い」だけが強調され、社会保障の公的責任を事実上、放棄するもので認められない。自立できない人を支えるのが社会保障である。

○ 「自助」・「共助」が全面的に要求され、国の責任である「公助」は大きく後退している。これは日本国憲法第25条に規定される生存権をないがしろにし、権利としての社会保障を国民から取り上げるものだ。本法附則で名指しされた生活保護制度に関しては、一部の不正受給を取り上げて、まるで全てが悪であるかのように言い立てている。生活保護は憲法で保障される国民の権利であり、自助・共助だけに頼るべきものではなく、生活保護制度の基本理念に則って議論されなければならない。少なすぎる社会保障費を回復することが必要だ。

二 社会保障の機能の充実と給付の重点化及び制度の運営の効率化とを同時に行い、税金や社会保険料を納付する者の立場に立って、負担の増大を抑制しつつ、持続可能な制度を実現すること。

〈意見〉
○ 「社会保障の機能強化」という言葉が改進法にはなく、「負担の増大の抑制」という言葉が使われている。その意味は、企業負担の抑制と「給付の重点化・適正化」であり、社会保障給付の抑制を明言したことになる。社会保障給付は経済を活性化する効果が、巨大企業よりも大きく、社会の安定化に貢献することを忘れてはならない。

○ 保険料を払えない人の立場が無視されており、保険証を交付せず、自費診療とする、などが一気に実行され、医療保険制度からの排除が全面的に行われる恐れがある。

○ 保険料や税負担に耐えられない国民が増大する中で保険原理を導入することは棄民である。失敗しても、失業しても、やり直しができる社会が国際競争力を育てる。

○ いま政府が行うべきことは、大企業に応分の社会貢献を求めることである。法人税減税を見直して税収を回復し、正規雇用を増加させて最低賃金を見直せば、日本は国内消費を復活してデフレ経済を脱却することができるだろう。経済の活性化はおのずと税収を増加させ、医療・福祉を削減することなく累積赤字の問題も解決できるだろう。北風よりも太陽だ。

三 年金、医療及び介護においては、社会保険制度を基本とし、国及び地方公共団体の負担は、社会保険料に係る国民の負担の適正化に充てることを基本とすること。

〈意見〉
○ 本法は、社会保障を保険料で賄う保険制度に変質させるものであり、給付を削減して費用負担を国民に科す、いわば社会保障制度解体法である。根本的に誤った考え方である。

四 国民が広く受益する社会保障に係る費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点等から、社会保障給付に要する費用に係る国及び地方公共団体の負担の主要な財源には、消費税及び地方消費税の収入を充てるものとすること。

〈意見〉
○ 税収入を一定の使途に限定することは財政の柔軟性を失わせ、予算配分は非効率となることは財政原則の基本である。推進法案はその原則を無視し、現在実施されている公費負担も含め、消費税収の範囲によって給付を狭めようとするとともに、公費負担医療の充実・維持を消費税増税の言い訳にし、ペイ・アズ・ユー・ゴーの原則に基づき、公的責任を矮小化させようとする政府の態度は、国民の命と健康を守る立場を放棄するものであり、容認できない。

○ 国民世論は消費税増税に強く反対している。このデフレ下に消費税を増税することは、国民・患者の生活をいっそう困難にし、苦しめることになる。そのため、経済的理由で必要な医療が受けられないなど受診抑制をさらに進行させる。また、医療機関の医薬品・医療材料、医療機器などの仕入れに際して消費税の負担を強いられる「損税」が増大し、医業経営はますます困難となり、地域医療崩壊が広がる。

○ 低所得者に負担感が大きい消費税は、社会保障の財源として最も不適切であることは、多くの研究者の意見が一致していることである。

○ 消費増税と福祉の削減から作り出された財源は、赤字国債の解消には向けられず、大型公共事業と大企業減税の穴埋めに使われている。経済格差を拡大することは好ましくない。

○ 民自公3党による消費増税法案の付則第18条2に、消費増税で生まれる財源を公共事業に投資する「成長戦略」に重点的に配分できるように定めたことは許されない。これは社会保障のために消費増税を行うと言っていたことと完全に矛盾しており、国民に対する全くの裏切り行為である。

○ いま政府が行うべきことは、大企業に応分の社会貢献を求めることである。法人税減税を見直して税収を回復し、正規雇用を増加させて最低賃金を見直せば、日本は国内消費を復活してデフレ経済を脱却することができるだろう。経済の活性化はおのずと税収を増加させ、医療・福祉を削減することなく累積赤字の問題も解決できるだろう。

(公的年金制度)
第五条 政府は、公的年金制度については、次に掲げる措置その他必要な改革を行うものとする。
一 今後の公的年金制度については、財政の現況及び見通し等を踏まえ、第九条に規定する社会保障制度改革国民会議において検討し、結論を得ること。

〈意見〉
○ 社会保障制度改革を具体化するために社会保障制度改革国民会議を新設したが、20名の委員を首相が任命することや、国会議員が兼任可能とする取り扱いでは、政府の既定路線をなぞるばかりである。そもそも、このような重大な問題については全国民の代表である国会において議論をすべきであり、内閣という限られたグループの中に国民会議を設置することには全くの合理性を見出すことができない。

二 年金記録の管理の不備に起因した様々な問題への対処及び社会保障番号制度の早期導入を行うこと。

〈意見〉
○ 政府が上げる書類の重複提出簡素化やワンストップサービスなどの利便性は行政努力で解決できる。総合合算制度は各制度での一部負担金や月額上限額の引き下げを行えば必要なく、年金記録はデータ管理の不備で生じたもの。「番号制度」の有無とは別問題であり、「番号」導入の必要はない。

(医療保険制度)
第六条 政府は、高齢化の進展、高度な医療の普及等による医療費の増大が見込まれる中で、健康保険法(大正十一年法律第七十号)、国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)その他の法律に基づく医療保険制度(以下単に「医療保険制度」という。)に原則として全ての国民が加入する仕組みを維持するとともに、次に掲げる措置その他必要な改革を行うものとする。

〈意見〉
○ 1961年に国民皆保険が達成されて以来謳われてきた「国民皆保険の堅持」ということばが「改進法」から消えて、「原則として全ての国民が加入する」となり、例外を容認することになった。皆保険が「原則」に後退したことは、「いつでも、どこでも、だれでも」良い医療を受けられる体勢を放棄することであり、無保険者を放置することに継る棄民政策である。

○ 保険料を払えない人には保険証を交付せず、自費診療とする、などが一気に実行され、混合診療が全面的に解禁される恐れがある。経済格差を命の格差まで拡大してはならない。

○ 「原則として」の文言を削除すること。

一 健康の維持増進、疾病の予防及び早期発見等を積極的に促進するとともに、医療従事者、医療施設等の確保及び有効活用等を図ることにより、国民負担の増大を抑制しつつ必要な医療を確保すること。

〈意見〉
○ 実施後5年経った特定健診・特定保健指導のエビデンスの明示と費用対効果の検証もない。さらに被扶養者の検診率は低迷し、住民健診から排除されたままである。よって、保険者による特定健診・保健指導事業の義務化はやめ、すべての住民を対象とした区市町村による基本健診を復活させるとともに、がん検診や予防接種なども含めた地域保健事業に対する国・地方の責任を強めること。

二 医療保険制度については、財政基盤の安定化、保険料に係る国民の負担に関する公平の確保、保険給付の対象となる療養の範囲の適正化等を図ること。

〈意見〉
○ 「保険給付の対象となる療養の範囲の適正化」を求めている。医療と福祉の分野において「適正化」という言葉は「削減」を意味する。お金がないから受診するな、という方針は転換すること。

○ 日本の医療と福祉の分野において、「適正化」は削減を意味してきた。我々は何度も煮え湯を飲まされる思いをして、公文書におけるこの言葉の意味を脳髄に叩き込まれた。正しい日本語で政策をわかりやすく伝えてほしい。

○ ①新しい薬や技術を健康保険に採用せず、自費診療とする、②保険免責制を導入し、低額の医療は自費とする、③受診時定額負担を徴収する、④終末期の延命治療は自費とする、⑤後発品のある先発薬の使用は、差額を自費とする⑥保険料を払えない人には保険証を交付せず、自費診療とする、などが一気に実行され、混合診療が全面的に解禁される恐れがある。世界が注目し、日本が誇る国民皆保険制度が崩壊し、国民の健康と命が営利企業に差し出されるようなことがあってはならない。

三 医療の在り方については、個人の尊厳が重んぜられ、患者の意思がより尊重されるよう必要な見直しを行い、特に人生の最終段階を穏やかに過ごすことができる環境を整備すること。

〈意見〉
○ 1月21日の第3回国民会議は、麻生太郎副総理の「高齢者はさっさと死ねるようにしてもらう」と発言した。麻生副総裁の発言や「適正化」を明記した前項と相まって、終末期の延命治療の給付抑制、あるいは給付の外とすることを危惧する。

四 今後の高齢者医療制度については、状況等を踏まえ、必要に応じて、第九条に規定する社会保障制度改革国民会議において検討し、結論を得ること。

〈意見〉
○ 社会保障制度改革を具体化するために社会保障制度改革国民会議を新設したが、20名の委員を首相が任命することや、国会議員が兼任可能とする取り扱いでは、政府の既定路線をなぞるばかりである。そもそも、このような重大な問題については全国民の代表である国会において議論をすべきであり、内閣という限られたグループの中に国民会議を設置することには全くの合理性を見出すことができない。広く意見を聞く姿勢を持って欲しい。

○ 団塊の世代が後期高齢者になりはじめ、2025年には高齢者数がピークに達すると予想されている。巨大な財政赤字を抱えながら税収の減少が続く中で、医療と介護の費用の対策を今から考えておくことに異存はない。むしろ今からでは遅すぎるほどにも思われる。しかしその対策は庶民に消費増税しておきながら、医療と介護を切り捨てて高齢者を見捨てることであってはならない。

(介護保険制度)
第七条 政府は、介護保険の保険給付の対象となる保健医療サービス及び福祉サービス(以下「介護サービス」という。)の範囲の適正化等による介護サービスの効率化及び重点化を図るとともに、低所得者をはじめとする国民の保険料に係る負担の増大を抑制しつつ必要な介護サービスを確保するものとする。

〈意見〉
○ 「保険給付の対象となる給付の範囲の適正化」を求めている。医療と福祉の分野において「適正化」という言葉は「削減」を意味する。無慈悲な削減を言葉でごまかすことは、止めてほしい。

○ 日本の医療と福祉の分野において、「適正化」は削減を意味してきた。我々は何度も煮え湯を飲まされる思いをして、公文書におけるこの言葉の意味を脳髄に叩き込まれた。適正化は「充実」と言い換えて、必要な事業を行ってほしい。

○ 団塊の世代が後期高齢者になりはじめ、2025年には高齢者数がピークに達すると予想されている。巨大な財政赤字を抱えながら税収の減少が続く中で、医療と介護の費用の対策を今から考えておくことに異存はない。むしろ今からでは遅すぎるほどにも思われる。しかしその対策は庶民に消費増税しておきながら、医療と介護を切り捨てて高齢者を見捨てることであってはならない。大企業が内部留保を拡大することが国益なのではなく、国民が安心して暮らせることが国益だという考えを持ってほしい。

以上

社会保障制度改革国民会議の審議のための意見[PDF:193KB]

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