秘密保護法案の危険性

公開日 2013年09月17日

2013年9月17日
東京保険医協会
政策調査部長 須田 昭夫

 

一、国民は国家の主人であって、政治は国民のために行われる。今日、政治が何をしてきたか、しているか、しようとしているか、に関して十分な公開が行われているとは言いがたい。民主主義を標榜する国家において、最も必要なことは政治の公開である。いかなる事項であっても、政治は国民に必ず公開されなければならない。少なくとも一定の期限を経過した記録はすべて公開されて、後世の国民の審判を受けなければならない。

一、社会が健全であるためには内部告発が必要である。「談合」を最初に告発した企業が罪を減じられるのは、このためである。組織が秘密にしていることを外部に漏らすことが社会正義にかなうことはいくらでもある。政治が不正を行わないという神話は成り立たない。政治の告発を禁じることは病巣を放置して国を死に至らしめることになる。

一、 秘密保護法案の基礎には、個人のプライバシーの調査が行われる。個人の思想、信条、経済状態、所属団体、行動の記録、疾病の治療歴を含む各種の経歴、家族の記録、交友関係、その他もろもろである。調査の誤りや誤解、意図的な虚偽があっても本人が訂正することはできない。社会通念上、このような調査が個人のプライバシーを侵害していることは明白である。憲法違反とも言える法律は、強引に成立させても無効である。

一、 秘密にしてよい事項のリストは「なんでも秘密」の歯止めにはならない。「××に関する運用、見積もり、計画、研究」などと、漠然として網羅的である。秘密は自己増殖する。防衛相が指定した防衛秘密は2002年に30件、2012年には234件であった。10年間に6倍である。「何が秘密かも秘密」を放置してはならない。

一、日本ではすべての職業について「業務上知りえた秘密を他に漏らしてはならない」という法律が適用される。秘密を不当に洩らせば、洩らした事項の社会通念上の重要性に基づいて、罪に問われる。いままでこの状態で国民には何の不都合もなく、政治の不正が暴かれる利益もあった。国民はむしろ政治上の秘密が多すぎて、もっと知りたいと感じている。裁量権を与えられたものが「秘密」や「特定秘密」など、重要性を恣意的に決定することは不正の温床を作ることに他ならず、国民の知る権利を侵害して不当に処罰することになる。

一、競争至上主義の米国に強要されて、日本はTPP交渉に参加している。TPPは秘密交渉であり、交渉経過も協定の内容も4年間秘密にされる。このような場合に国民は国際条約を知らされずに従わされることになる。主権在民の考え方に合致しない法律は認められない。とくにTPP問題を抱えながら秘密保全法を持ち出すのは、協定の内容を国民に知らせないという意図が見え見えである。

一、いま秘密保護法案が出されているのは、日米相互防衛援助協定のために、憲法を無視する集団的自衛権を行使しようとしているからだ。しかしよく考えてほしい。日本国憲法には開戦規定がない。つまり自国の判断では戦争を始められない。そのような国が米国の要求に従ったり、尻馬に乗ったりして戦争できるようにすれば、子供にミサイルを任せるようなものであり、危険極まりない。米国にノーと言える成人になり、自分の意思で戦争を考えられるまでは、戦争をしてはならない。日本の若者を米国の戦争に差し出すことは認められないのだ。

以上

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