「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」に対する意見

公開日 2013年09月23日

2013年9月23日

復興庁 法制班 御中

東京保険医協会
会長 拝殿 清名
研究部部長 申 偉秀

 復興庁におかれましては、原発事故被災者の支援に尽力されてきました

 しかし、東日本大震災発生、福島第一原発事故発生後に「原発事故子ども・被災者支援法(支援法)」は施行されたものの、それ以後1年2ヵ月以上の間、原発事故、それに起因する被曝で被災者が健康を損ねる、失職、生活の基盤が失われるなどの状態が今も続いています。これを解消する貴職の取り組みは不十分で、これらの問題の解決には程遠い状況です。

 8月末に、支援法について、「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」(基本方針案)が公表され、福島県外への避難者に対する民間団体を活用した情報提供や相談対応が盛り込まれるなど、いくらか支援策が進んだところも見受けられます。しかし、多くの問題が残されたままです。

 第1に事故発生から2年半が経過しても、なお支援が進まず、一貫した支援が継続されないのは「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成6年法律117号)」のように支援の理念、対象者、支援内容が具体的に定まっていないのがその大きな要因の一つと思われます。より具体的な支援の基本法を策定して継続した支援を実施すべきです。

 問題点の第2は、事故後「相当な」線量が広がっていた福島県中通り・浜通り(避難指示区域を除く)のみを支援対象地域としていることです。事故による放射能汚染は、福島県に限られず、茨城県や千葉県など、より大きな範囲に広がっており、支援対象地域を上記に限定するのはあまりにも狭すぎるといわざるを得ません。また、この地域設定は、福島県外も支援対象地域となる旨の国会での答弁にも反するものです。

 放射能汚染状況を正確に把握して、事故発生時に、放射能汚染の被害が出現する可能性がある放射能汚染地域の住民は総合的な支援の対象にすべきです。

 第3に今回の基本方針を策定するにあたって、事前に支援を求めている住民や避難者からの意見を聴取することなく、基本方針案の策定が進められました。そのため生活支援等施策は、そのほとんどが既存施策の羅列に過ぎず、新規避難者の生活の礎となる住宅についての支援が含まれていません。また交通手段の補助などその他の要望の強かった項目も網羅されていません。これでは支援法の理念を実現するものとは言えません。今回のパブリックコメントは期間を延長しても24日間という短期間です。再度延長すると同時に、各地で公聴会を行うなど、被災者からの意見聴取を行うべきです。

 以上の理由により下記の施策を速やかに実施することを提案します。

一、原発事故被災者に継続した支援の基本的な考え方を網羅した「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」と同等の法律(新法)を速やかに策定すること。

一、新法に以下の事項を明記すること。

  1. 福島県に限らず放射能汚染被害の出現が予想される地域を定め、その地域で被災した住民を支援対象とし、原発事故被災者手帳を交付すること。なお被災後に他県や他地域に移転をした者も手帳交付の対象にすること。
  2. 前項の手帳を所持する支援対象被災者の健康の維持・増進のために、国がその費用を全額負担して、十分な医療・介護の提供、定期に健診を実施すること。
  3. 生活の基盤を確立して健康を守るために就労可能な者は就労することが望ましい。原発事故のために失職して求職中であるが、就労が困難なものに職業を斡旋するなど就労支援を行うこと。
  4. 支援対象被災世帯で、失職や健康を損ねるなどの理由で必要な生活費を得ることができない場合は、生活に必要な費用を支給して、生活支援を行うこと。
  5. 生活の基盤を確立し健康を守るためには住居の整備が重要であり、避難をしている世帯で、住宅を新築する場合は住宅手当を支給すること。また建設地と避難している場所が異なる場合は移転に要する費用を移動手当てとして支給すること。
  6. 被災地域の住民が日常生活を安心して過ごせるように、希望する住民の持参する飲食物の放射線量を毎日測定するなどの実際的な放射線モニタリングシステムを整備すること。
  7. 状況の変化により、新たに必要な支援が発生したときは速やかに支援すること。

以上

「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」に対する意見[PDF:137KB]