「東京都地域医療構想案」に関する意見

公開日 2016年06月27日

2016年6月27日
東京保険医協会
病院有床診部部長 細田 悟

 日頃より都民の健康と命を守るためにご尽力なされていることに敬意を表します。

 東京都地域医療構想案に対する意見募集に対し、下記の通り意見を提出いたします。

 19ページおよび241ページ参考データにおける「平成27年度病床機能報告における医療機能別病床数」は、高度急性期23,427(22.7%)、急性期48,327(46.7%)、回復期8,577(8.3%)、慢性期23,075(22.3%)です。これに対し、35ページの都における2025年の病床数の必要量は、高度急性期15,888(14.0%)、急性期42,275(37.2%)、回復期34,628(30.4%)、慢性期20,973(18.4%)です。概して、高度急性期、急性期、慢性期から回復期に転換することで、2025年の必要量に適合していく流れが伺えます。

 38ページにあるように、療養病床については現在国において療養病床のあり方等に関する検討会(および後続の特別部会)を設置し、医療療養病床25対1および介護療養病床にかかわる制度・対応方針を策定中という極めて不安定な状況下にあります。したがって、医療機関にとっては、療養病床をそのまま存続させるか、一部の療養病床を、回復期や(地域)急性期の機能に転換させることを検討するのが現実的といえます。東京都においては、慢性期機能で大きな役割を果たしている療養病床への支援が重要と考えます。

 また、地域医療、地域包括ケアシステムを形作るためには、それを担う人材を確保することは、構想案でも記載されている通り極めて重要です。

(187ページ)
グランドデザイン「Ⅱ.切れ目のない医療連携システムの構築/①救急医療の充実」について

 13ページの記載によると、急性心筋梗塞・脳卒中・成人肺炎・大腿骨骨折は救急搬送が多く、自医療圏、近接圏域で受療する傾向にあるとのことです。

 療養病床をもつ医療機関について、上述の背景から、回復期機能や急性期機能を担う経営基盤を作るため、回復期や急性期で行われている急性心筋梗塞・脳卒中・成人肺炎・大腿骨骨折の救急搬送の受け入れを検討する慢性期医療機関に対して一定の基準の下に財政援助を行うことが必要であると考えます。

 このことについて、地域医療介護総合確保基金にかかる東京都計画では平成26年度~27年度計画において、病床機能分化推進事業(平成27年度~28年度)として転換促進委託(10病院)、転換実行支援委託(4病院)、経営研修(150名)を行っております。平成29年度以降も転換実行支援を中心に取り組みを一層強化すべきと考えます。

(187ページ)
グランドデザイン「Ⅱ.切れ目のない医療連携システムの構築/②医療連携の強化」

(191ページ)
グランドデザイン「Ⅲ.地域包括ケアシステムにおける、治し、支える医療/③在宅療養生活の支援」について

 病床は地域包括ケアに欠かせない医療資源ですが、設備は老朽化します。既存の病床の全てが2025年まで残存しているとは限らず、耐震化・増強・建て替えの潜在的な需要があるといえるでしょう。2025年に向けてこれらの情報についても医療機関から聴取するなどして都として十分に把握し、市区町村等と連携の上、必要に応じて財政援助策を検討すべきと考えます。とくに、療養の場について国の方針が未だ定まっていないことから、療養病床については配慮が必要です。

 また、慢性期病床の推計については、国の算定式が慢性期病床の大幅な削減と在宅医療への移行を前提としているため、真の入院需要を表しているとは言えません。東京都がこれまで一般病床から療養病床への転換等のための施設整備費補助を行ってきたように、療養病床確保の必要性は変わりません。2025年の必要病床数の見直しも含めて、柔軟に対応を行うよう求めます。

(197ページ~)
「第5章/2 東京都保健医療計画改定後に開始した主な取り組み」について

 2ページ、「第1章 地域医療構想とは」において、「地域医療構想は都民、行政、医療機関、保険者が協力し、東京の医療提供体制を維持・発展させていくための方針」とされています。都民はじめ各関係者(団体)が地域医療構想に納得し協力していくためには開かれた情報が不可欠です。第5章に紹介されている様々な施策の取り組みについて、具体的にどのような成果を獲得したかを公表すべきです。特に医療人材や介護人材の確保・定着・養成という点については都民が医療・介護を受けるにあたって直接関係する重大事項です。

以上

「東京都地域医療構想案」に関する意見[PDF:149KB]