財務省の介護マイナス改定要求に抗議する

公開日 2014年10月16日

2014年10月16日
東京保険医協会
会長 拝殿 清名

 財務省は、介護事業者の利益率や特別養護老人ホームの「内部留保」を問題視して、来年度改定時に介護報酬6%の引き下げを求めてきた。その一方で、介護職員の処遇改善に特化した介護報酬の加算を充実させるとしているが、報酬全体が引き下げられれば、人件費の抑制やサービスの質を落とさざるを得ず、事業所の撤退や縮小、介護崩壊の事態さえ招きかねない。われわれは、地域の医療・介護を守る立場から、財務省の介護報酬引き下げ要求に断固反対し、その撤回を求めるものである。

 とくに特別養護老人ホームに対して「全体の内部留保は2兆円」「一施設あたり平均3億円の内部留保」などと、その内部留保を問題視し、「今後は内部留保が蓄積しない水準まで介護報酬水準を適正化することが必要」(2014/10/8財務省主計局資料)として介護報酬の大幅引き下げを狙っている。しかし、「内部留保多寡の判定」という厚労省の資料(社会保障審議会介護給付費部会2013/5/21)でも、「多い」32.8%、「中間レベル」14.6%に比べて、「少ない」と判定されたのは過半数の52.5%に及んでいるのだ。個々の実態を反映しない利益率や内部留保などを理由にした財務省の引き下げ方針は、平均値以下の事業者を切り捨てる暴挙である。

 さらに特別養護老人ホームなど社会福祉法人は、施設整備費の4分の3は国・都道府県、区市町村の公的資金で成り立っている。ところが社会福祉法人の会計処理では、この国庫補助金等は事実上減価償却できず、決算上は架空の収入として繰越となる仕組みだ。このため現金は増えないのに「内部留保」が累積していくように見えるのだ。

 財務省は「社会福祉法人の会計においても減価償却費を計上しているため、建替えに必要な現金は、収支差がゼロであっても蓄積する。したがって、『建替えのために内部留保が必要』との議論は妥当でない」(2014/10/8財務省主計局資料)などと述べているが、この指摘は的外れ以外のなにものでもない。

 われわれは、介護崩壊を招きかねない財務省の介護報酬引き下げ要求に断固反対し、その撤回を求める。そして介護給付の充実のために介護報酬の大幅引き上げを求めるものである。さらに、報酬の引き上げが保険料や利用者負担に繋がらないように、保険財源における国の負担を増やすとともに、緊急を要する介護従事者の処遇改善には、介護報酬への上乗せではなく、従前の介護職員処遇改善交付金のように国庫による財政支援を要求するものである。

以上

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