秘密保全法 知らぬ間に国民監視――政府の都合で「特別秘密」!?

公開日 2013年07月15日

講師の清水勉弁護士(日弁連個人情報問題対策委員長)
25人が参加した秘密保全法学習会

政策調査部は、6月17日、清水勉弁護士(日弁連個人情報問題対策委員長)を招き、政策学習会「情報は誰のものか?秘密保全法を考える」を開催し、会員ら25人が参加した。

秘密保全法は尖閣諸島沖衝突事件のビデオ映像がインターネットに流出したことなどをきっかけとして、国の秘密保全体制を強化することを目的としており、「国の存立にとって重要な情報を新たに特別秘密に指定すること」や「秘密を扱う人の適性評価制度の導入」、「特別秘密を漏らした人への厳罰」などが検討されている。清水弁護士は「特別秘密の対象とされるものとして、『外交』、『国の安全』は理解しうるが、『公共の安全と秩序の維持』は漠然とし過ぎており、国民生活に関わってくる危険性がある」と警鐘を鳴らす。

25人が参加した秘密保全法学習会 秘密保全法制の検討報告書は、ロシアの工作官が海上自衛隊三佐に対してスパイ活動を行ったボガチョンコフ事件や、内閣情報調査室職員のロシア大使館員への情報提供事件を持ち出し、秘密保全強化を訴えている。清水弁護士は、「これらの事件では別部署の職員が勝手に部屋に入りコピーをとることができたというような情報保全体制の不備が問題で、ルール作りをすれば充分に防げるもの」だと説いた上で、「ボガチョンコフ事件以降、真に重大な情報漏えいは起こっておらず、今の日本では新たに秘密保全法などの立法措置を必要とする事情(立法事実)はない」とした。

また報告書の内容は、熱心な取材活動を秘密への不正アクセスとみなす可能性があり、秘密を取り扱う人物の渡航歴、犯罪歴、通院歴、家族や友人などを当局が調査し、ファイル化して人的管理を行うなど、国民の知る権利や取材の自由、プライバシー権を大きく制限する危険をはらんでいる。2003年のイラク自衛隊派遣の際には自衛隊が国内反対勢力の集会主催者、ビラ配布者などの行動を実名や写真とともに収集した。秘密保全法が制定されれば「公共の安全と秩序の維持」のため、活動家だけでなく全国民の監視が常態化することが危惧される。

(『東京保険医新聞』2013年7月15日号掲載)