福島支援は当事者の選択を尊重すべき――児玉龍彦東大教授・福島復興の道筋を語る

公開日 2013年10月15日

児玉 龍彦 先生

10月5日、公害環境対策部と政策調査部の共催で、児玉龍彦先生(東京大学先端科学技術研究センター教授/東京大学アイソトープ総合センター長)を講師に招き「福島の放射線汚染からの環境回復について」と題し、講演会を行った。当日は会員・歯科医師ら68人が参加した。

児玉先生は、冒頭で「20世紀と21世紀で劇的に変わったことがある。当事者主権、セカンドオピニオンという考え方だ。医療の世界でも、希望を聞いたうえでさまざまな選択肢のなかで患者が求める一番いい治療法を選択している。福島の支援に関わる場合も同様だ」と述べた。

そして福島を支援する際の原則として「大変な事実でも正確に伝える、いろいろな最新の科学技術をわかるように伝える、自分達の意見は強制しない、自分達の意見と違ったことを当事者が決定しても、それに対して全力で応援する。この4つだ」と紹介した。

68人が参加した講演会(10月5日・協会セミナールーム)

また政府が放射線量について嘘の発表をしているため不信感が生じているとの批判について、「政府はデータを選択的に公表しているが、放射線量について虚偽の発表をしているとは思えない。今日私が発表したデータは政府も出している」としながらも、「一番大きい問題は政府が当初事故を小さく見せようと対応したことによる不信感、さらに初期の対応に責任があった人が今なお責任ある地位にいることだ」と指摘した。

講演ではその他、低線量被曝についての最新の考え方や、福島県での米の全袋検査の取り組み、海産物の汚染状況と対策、住宅・森林の除染、そして汚染土壌を高い温度で焼却しセシウムを一度気化させた上で冷却してバグフィルターで取り除くといった放射性物質の処理方法など幅広い話題について言及した。

参加者からは「話は難しかったが、とても刺激を受けた」「実際に現地に入って活動している方の話は重要。『住民が主体となった運動』という視点に改めて納得した」といった声が聞かれた。

(『東京保険医新聞』2013年10月15日号掲載)