レポート 原水爆禁止世界大会2014――もう核の被害者を生み出すな

公開日 2014年08月25日

分科会「被爆電車に乗って」の参加者。親子連れを中心に90人が参加した。

8月4日~6日、7,000人の参加で開催された「原水爆禁止2014年世界大会・広島」。東京反核医師の会は、渡辺吉明代表委員(東京歯科協会顧問)と向山新代表委員(東京保険医協会会員)を派遣。8月5日に開催された分科会「被爆電車に乗って」の企画・運営に協力した。

分科会では親子を中心に90人の参加者が交流した。当日の模様を野中事務局員がレポートする。
核兵器は非人道的兵器 早期廃絶へ更なる取り組みを

核兵器は非人道的兵器 早期廃絶へ更なる取り組みを

今年の原水爆禁止世界大会では、来年NPT(核拡散防止条約)の再検討会議に向けて核兵器禁止の世論を高めていく必要があることが言及された。

現在、核保有国はNPTを批准しているアメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランスの5カ国に、NPTを批准していないインド、パキスタン、北朝鮮の3カ国。核保有国、そして核の傘の下にある国々は、核兵器を使える状態にすることにより自国の安全を図るという、核抑止論を根拠に核兵器廃絶への実効的な取り組みに反対し続けている。

こうした核保有国の動きに対し、国際社会では核兵器の非人道性に着目して核兵器の廃絶を目指す動きが進んでいる。2013年のオスロ(ノルウェー)に続いて、2014年2月にメキシコで、そして12月にはオーストリアでも核兵器の人道的影響に関する国際会議が開催される。

世界大会に参加したアレクサンダー・クメント氏(オーストリア大使)は「グローバル化された現代の社会では、自国の安全のために他国を危険にさらす核抑止論は時代遅れである。いくつかの国が核兵器を保有していることが他の国が核を持つことの動機になっており、この連鎖を断ち切ることが重要だ」と指摘した。

国連でも、2013年の第68回国連総会で、核兵器の全面禁止条約の交渉を緊急に開始することを求める決議が171カ国の賛成で採決され、核兵器廃絶を求める声は高まっている。

しかし広島に原爆が投下されてから69年が経過し、被爆者の平均年齢は79.4歳になる。今なお心身ともに苦痛を強いられている被爆者のためにも早期の核廃絶が求められる。被爆者の坪井直氏は自身の被爆体験を語り、「被爆後も様々な病気に苦しめられ、入退院を何度も繰り返した。数十年間、点滴の治療を受け続け、今も2つのガンと心臓病を患っているが、核兵器が禁止されるまで死ぬわけにいかない。あきらめずに頑張っていこう」と訴えた。

東京反核医師の会 分科会へ親子中心に90人が参加

放射線の人体への影響を話す向山新代表委員
被爆電車の説明をする渡辺代表委員

8月5日、東京反核医師の会が企画・運営する動く分科会「被爆電車に乗って」が開催され、親子連れを中心に90人が参加した。分科会「被爆電車に乗って」は今も市内を走る原爆に被災した被爆電車に乗り、親子で原爆が投下された当時の広島を追体験する企画だ。

映画や被爆者の話を聞いて原爆の悲惨さや、原爆投下後3日で復旧した広島電鉄について学習しつつ、レクリエーションを通じて参加者同士交流を深めた。

被爆電車の説明をする渡辺代表委員 また渡辺吉明先生(歯科協会顧問)が広島電鉄の被爆後の惨状や復興の様子などを資料などをもとにして解説。さらに向山新先生(協会会員)から放射線の人体への影響について情報提供を行った。

被爆電車に乗車した参加者は、広電前駅から広島駅まで30分の道のりを、放射線障害による下痢が赤痢と誤診され、その方たちが隔離された福屋百貨店などの原爆遺構を眺め、当時の状況に思いをはせた。

参加者からは、「当時の乗客が大変な被害を受けたことを実感した」、「母が偶然普段と違う電車に乗ったため、原爆の直接的な被害を免れ、私は生まれることができた。今日、被爆電車に乗ってそれを思い出し、感慨深かった」などの感想が寄せられた。

(『東京保険医新聞』2014年8月25日号掲載)