3.11を忘れないために 市民講座63人集う

公開日 2015年11月25日

クイズ交流会で盛り上がる市民講座参加者(11月3日/協会セミナールーム)

11月3日、協会サルビア会・就労環境部は宮城県保険医協会の協力、新宿区の後援を得て4回目となる「気軽に学べる市民講座―3.11を忘れずに向き合っていくために」を協会セミナールームで開催し、会員・一般市民ら総勢63人が参加した。

はじめに、成瀬清子部長が「3.11を忘れないために私たちができることを続けていきたい―そんな想いから市民講座を開催してきた」と開会挨拶した。

消防庁が講演「津波てんでんこ」の教え

東京消防庁防災部の小暮和弘氏が「地震から大切な命を守るために」と題して講演した。小暮氏は、「津波てんでんこ」の教えを紹介し、津波が来たらまずは自分が高台に避難して身を守ることが重要と述べた。

首都直下地震が発生した場合、東京でも最大死者数が約1万人と想定されている。東京には木造住宅密集地があり、そのような地区では特に火災を発生させないこと、万一発生した場合は初期消火がとても重要だと述べた。

災害の現場では消防など、公的な救助や支援がすぐには行き届かないため、日頃からの備えが大切であり、企業でも一斉帰宅の抑制等の取り組みが重要であると説明した。また、家具の固定など今日から始められる災害対策の重要性を強調した。

クイズ・物産展など多彩な取り組み

被災地(岩手・福島・宮城)を支援する物産展を初開催

休憩時間には、片倉和彦理事のクイズ、非常食の試食と、被災地の復興を支援する物産販売が行われ、売り切れの物産が多数出るなど大変盛況であった。非常食の試食では、三菱地所(株)から缶詰を、セコム(株)からアルファ米を提供いただき、参加者から好評を博した。

被災地・宮城から報告 「復興進まず」

午後は、宮城県保険医協会副会長の横堀育子先生が「宮城県の現状」について報告。東北4県で震災前の売り上げに戻った企業は、水産・食品加工業では19%にとどまるっていると指摘。医療の面では、沿岸部の自治体はもともと医療過疎地域だったが、震災後も医療機関が十分復旧していないことを紹介した。

その他にも、仮設住宅の居住者で体調を崩す人が増えていることなど、十分に進んでいない復興の実態について語った。そのうえで「東日本大震災のような大きな災害の場合、一言で復旧と言っても並大抵のことではなく、膨大な時間やエネルギーが必要だと感じている」と述べた。

「災害時の健康管理」市民にレクチャー

災害時の健康管理として、田中眞希理事は、止血方法や病院でのトリアージについて説明。停電を想定し、暗いなか懐中電灯の明かりだけで包帯を巻く実習を全員で行った。

成瀬部長は、脱水状態における水分補給や火災からの避難方法について説明した。避難所での感染性胃腸炎などへの対策として、手洗いなど予防の重要性について述べた。そして「日頃から知識や災害時に役立つ備品などを準備しておくことが大切。災害時はあるもので、できることをしよう」とまとめた。

災害と東北(被災地)を忘れない

最後に、須田昭夫副会長が「東京でも災害を忘れないこと、そして東北(被災地)を忘れないことが大切だ」と挨拶し、閉会した。

参加者からは「テレビでは放送されない被災地の現実を知ることができ、自分でも実践できる健康管理の方法を学べて興味深かった」「防災について考えるきっかけになった。自分ができることからやっていきたい」など多くの感想が寄せられた。サルビア会・就労環境部では、来年度も市民講座を開催する予定だ。

(『東京保険医新聞』2015年11月25日号掲載)