東京保険医協会 新点数諮問案検討会「アピール」

公開日 2014年02月26日

2014年2月26日
東京保険医協会 病院有床診部

2025年に向けた地域医療ビジョンへの政策誘導の改定
汎用点数は据え置き、大多数の医療機関に恩恵なし

国民・保険医が求める医療の提供を可能とする診療報酬改定を

 2月12日、今次診療報酬改定について答申が行われた。初診料282点(+12点)、再診料72点(+3点)、外来診療料73点(+3点)をはじめ、入院基本料・特定入院料・短期滞在手術基本料で平均2%程度の上乗せが行われたが、これらは消費税8%増税への対応であって、有床診療所入院基本料6、有床診療所療養病床入院基本料の特別入院基本料を除き、増税対応分を除いて点数が引き上げられていないことをまず確認したい。国は私たち保険医の声を点数改定に反映することなく、2025年までに安上がりの医療・介護体制の構築を目指して「地域包括ケア・システム」の推進に大きく舵を切った。

 7対1の要件強化(看護必要度の要件強化・在宅復帰率とデータ提出加算の要件化など)により、一般病床36万床のうち9万床を2年間で削減しようというのが今次改定の大きな柱となっている。国は、2014年からいよいよ「病床機能4分類」の報告制度をスタートさせ、都道府県が作成する「地域医療ビジョン」(2018年~)を経て、現行では2025年までに本来必要とされる一般病床129万床と療養病床34万床の計163万床を再編し、高度急性期18万床、一般急性期35万床、亜急性期26万床、長期療養28万床、地域に密着した病床24万床の計131万床まで削減することを狙っている。

 こうした大きな医療再編の流れの中に位置づけられる今次改定は、地域医療を担う医療機関の存続に関わる改変となっている。

 まず、「同一建物居住者」に対する、在宅時医学総合管理料、特定施設入居者等医学総合管理料、同一建物居住者訪問看護・指導料、精神科訪問看護・指導料(Ⅲ)の大幅な引き下げだ。真摯に在宅医療に取り組む会員からは、「年間1000万円を大きく超える損失が見込まれ、全く先が見えない」との声も寄せられている。在宅医療の推進は国民の要求でもあるが、これらの改定はそれに逆行するばかりか、在宅医療機関に壊滅的打撃を与えかねない。

 また、病院において常勤の管理栄養士が配置できない場合の40点という大幅減算も見直しが必要だ。有床診療所では管理栄養士配置要件は廃止されたものの11点が減算され、栄養管理実施加算(12点)を算定するには、非常勤の管理栄養士や常勤の栄養士ではなく、常勤の管理栄養士を配置しなければならない。さらに、有床診療所では栄養管理実施加算を算定した場合、入院栄養食事指導料(130点)が算定できないという矛盾点も浮上している。

 救急医療管理加算では「2」が新設され、「その他、アからケに準じる重篤な状態」の救急患者について点数を半減(800点⇒400点)。さらに、「入院後、状態が悪化した場合」は算定から除外した。さらに、年間一定件数以上の手術を行うこと、三次救急医療機関であることなどを施設基準とする総合入院体制加算1、手術・処置の「休日・時間外・深夜加算1」などが新設されている。こうしたハードルの高い施設基準を満たすのはごく一部の医療機関に過ぎず、大部分の医療機関ではこうした引き上げ財源が重点配分された点数を算定することはできない。算定頻度が高い点数は引き上げられていないことから、実質的なマイナス改定となることが懸念される。

 このような医療現場の実態を無視した不合理な改定内容は断じて容認できない。協会・保団連は、早急な見直しと改善を求めていく。

 特例除外制度の廃止や病床削減など、政府の政策によって、患者が病院から追い出されるような状況をこれ以上認めるわけにはいかない。われわれが望むものは、退院した患者が地域で安心して療養生活が送れるような体制を構築するために必要なヒト・カネ・モノが、社会保障制度の中で十分に充足されるシステムである。この立場から今次改定によって重大な影響を受ける患者と地域医療を守るために、診療報酬の不合理是正と改善を求めるとともに、社会保障を変質させようとする「社会保障・税一体改革」の方針撤回をここに改めて求めるものである。

以上

東京保険医協会 新点数諮問案検討会「アピール」[PDF:143KB]