保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

共通番号法衆議院を通過――国民のプライバシーを侵害

公開日 2013年05月05日

院内集会「被災者支援に役立つか?疑問だらけの『共通番号法案』」(4月23日)

4月23日、日本弁護士連合会(日弁連)が院内集会「被災者支援に役立つか?疑問だらけの『共通番号法案』」を開催し、医療者の立場から協会の田中眞希理事が発言した。今回の集会は「被災者支援」を中心に取り上げ、「大震災後、政府は災害対策にも活用できるということを謳ったが、番号を導入する口実にすぎない」という声が相次いだ。

共通番号法案は5月9日、衆議院本会議で可決され、審議は参議院へと移る。国会審議を通じ、法案の問題点が次々と明らかになっており、国民への十分な周知、説明もないまま法案成立へ突き進むことは許されない。協会は9日付けで抗議声明「共通番号法の衆議院可決に抗議し、参議院での徹底審議と廃案を求めます」を内閣総理大臣宛に提出した。

「被災者支援」は共通番号導入の口実

被災地支援の経験から共通番号の矛盾を訴える田中眞希理事

田中理事は東京協会の被災地支援活動で2週に一度、宮城県石巻・東松島地区に赴き、医療支援にあたった経験から、災害医療支援に対する番号の有用性について発言した。毎回異なるボランティアの医師が来て、毎回既往歴等を聞かれることに被災者が辟易したことから、医療情報のクラウド化、番号導入が必要という意見もあるが、これについて「『知らない医師に自分の話をするストレス』が『知らない医師に情報を見られるストレス』に変わるだけだ」と指摘。「被災地では安定した薬品供給や水の確保が出来ないなかで、そもそも基本的な医療がままならない状況であり、医療物資やライフライン、通信インフラ等の復旧・確保が重要。番号ひとつでなんでも解決というわけにはいかない」と訴えた。

実際に仙台・石巻地域で支援を行ってきた弁護士は「避難者リストは番号がなくても作成できるし、むしろ避難所に入れなかった自宅避難者の把握がむずかしく、避難所の数が足りなかったこと自体が問題」、「生活再建支援金の受け取りなどは手続きがオンラインで出来たとしても、罹災証明のチェックを公務員が行う必要がある。マンパワーが足りなくて受け取りが遅れた」などの例を挙げ、道路・避難所等のインフラの整備・人員の充実こそが迅速な復旧・復興につながると主張した。

清水勉日弁連情報問題対策委員長は院内集会閉会にあたり「共通番号が発想されてから随分と時間が経った。この間に我々も色々と問題点を洗い出すことができた。今は国民世論を形成できていないが住基ネットも法成立後に運動が大きく盛り上がった。成立してからが本当のたたかいだ」と参加者を鼓舞した。

導入目的は破綻 費用対効果も示せず

共通番号法案は行政事務の効率化や、所得情報と社会保障給付情報をひもづけして負担と給付の適正化などを図ること、災害時の救援(安否確認や民間保険金の給付など)を主な目的としているが、多くの欠陥・問題点が指摘されている。

政府は番号導入によって所得の把握が正確になると主張しているが、民主党政権がまとめた大綱のなかで、事業所所得や海外資産の把握に限界があることを認めている。また「行政事務の効率化」を声高に主張しているが、行政機関の事務作業でどの程度の効率化が進むのか具体的な事例は示されないままだ。初期投資に3,000億をかける新規事業であるにもかかわらず、費用対効果の試算すら実施していないのが実態だ。

共通番号法案に潜む危険(図)

被災地支援の経験から共通番号の矛盾を訴える田中眞希理事

共通番号制度の導入目的は不明確であり、税と社会保障の分野では徴税強化や社会保障給付の削減に使われる恐れがある。また法案では、3年後に利用範囲拡大を検討するとしており、民間企業などでの「番号」活用が広がる可能性が高い。

法案には「刑事事件の捜査」にも共通番号制度を利用することが明記されている。警察等が収集する個人情報は、新設される第三者機関の監督の対象外とされており、個人のプライバシーを守るシステムになっていない。

ひとつの共通番号にあらゆる個人情報を集約する「名寄せ」により、ひとたび個人情報が漏えいすればその被害は甚大なものとなる。

「成りすまし犯罪」に対する対策は無策に等しく、被害を防ぐ手立てがないことが明らかになっている。

協会は参議院での徹底した審議と廃案を求め運動を強めていく。