都福祉保健局と懇談 世界標準のワクチン対策等を要望

公開日 2013年09月25日

都福祉保健局(手前)と懇談する協会役員

「2020年オリンピックの東京開催が決定し、経済成長が期待されている。都民の医療と健康を守るために、感染症対策など7年後を見据えて、今から手を打って欲しい。そのためにスウェーデン1国に相当する都の財政力を活用していたただきたい」

9月12日、2014年度東京都予算等請願に基づく東京都福祉保健局との懇談で、拝殿会長は東京の医療・保健・福祉の充実を強く求めた。

予防接種制度の改善、一般病床・療養病床や看護師の確保、難病対策、ぜん息医療費助成制度存続、保険医指導改善等、要望項目は毎年多岐にわたるが、今年度は資料として昨年の回答を持参したところ、福祉保健局側は(昨年と同様の請願項目について)ほとんど変化のない回答を読み上げていることが明らかになった。懇談のなかでも、協会側は「去年と同様の回答の場合には『昨年と同様』とし、懇談の時間を確保したい」と強く要望した。

一方、福祉保健局側からは協会が用意した資料は大変参考になるとの声もあり、今後も継続して懇談会を開催し、現場の声を行政に届けることの重要性が確認された。都とのやり取りの一部を以下に紹介する。

風しん対策

都福祉保健局との懇談に臨む拝殿会長

【協会】今回の風しん流行で最も多く罹患したのは20~30歳代の女性と20~40歳代の男性であった。風しん抗体価の高い女性からもCRS(先天性風しん症候群)の児が発生しているケースもあり、CRSを防ぐには女性だけでなく男性の予防接種も重要だ。川崎市では男性への助成期限を11月まで延長した。東京都は9月末とされる男性の助成期限の延長や対象者の拡大を全く検討していないのか。

【都】風しんの一番の問題はCRSの発生であり、都としては一番の対策として女性へのワクチン接種が効果的だと認識している。しかし、妊娠中の女性は接種できないため、次善の措置として妊婦の夫に対しての費用助成を行った。風しん・CRSの危険性について、これまで情報を周知してきたので、これから妊娠を希望される方には接種いただけたと考えている。男性の助成期限延長・対象の拡大は考えていない。川崎市の取り組みについては把握していない。

病床計画

【協会】今次の医療計画では、これまでのような療養病床・一般病床の区別がなく合計の病床数だけが記されている。このような表記にしたのは、増床計画に消極的になったからではないのか。

【都】病床区分に関わらず、地域の実情に応じながら総合的に判断することが必要と感じ、個別の目標は記さなかった。増床計画に消極的になった訳ではない。

【協会】民間業者による東京都内の満床率調査がある。占有率が95%を示す日時もあるようだ。東京都としてそういった調査を行うことが必要ではないか。

【都】どのような方法で調査をされているのか、情報収集した上で可能かどうか検討していきたい。

個別指導

【協会】帯同する弁護士を被指導者の隣ではなく、後方に座らせるのはなぜか。弁護士は依頼人の人権を守るのが職務である。(事務官も含めた)指導者3人の前に被指導者1人であればやはりプレッシャーを感じるだろう。この件は厚生局にも連絡し、ぜひ回答をいただきたい。

【都】指導は被指導者に対して行われる為、弁護士は後方に着席いただく。被指導者が弁護士との相談を求めれば、指導側が許可したうえで弁護士と相談することを認めている。厚生局東京事務所にはこの件について連絡する。

【協会】持参するカルテの指定は4日前と前日に連絡をもらう。指導前日とはいえ医師は診療を行っており、診療を終えてから持参カルテの準備をするのは大変な重労働である。持参カルテ指定の早期連絡と合わせて改善はできないか。

【都】カルテは初診時からでなければ診療の正当性を正しく判断できないと認識しているため、初診時からのカルテの持参をお願いしている。

【協会】前述のような厳しい状況のなか、必要な書類を忘れることもある。必要な書類が揃わない場合には指導中断、再指導となるというが、東京都が行う指導の場合、何カ月後に再指導を実施するのか。(厚生局による指導の例だと思うが)2011年度は概ね5~6カ月後に再指導であったが、2012年度に入ると事務処理の遅れか10カ月後、14カ月後に再開というケースもある。

【都】再指導をいつまでに実施するのかという基準は設けていない。被指導者と日程調整を行って決定している。厚生局東京事務所にはこの件について連絡する。

看護職員の確保

【協会】少子化により都立看護学校の定員を見直(削減)してきたというが、看護学校の最近の入学者の年齢はどのようになっているのか。今は一度社会に出た後、非正規雇用等の厳しい雇用情勢のなかでリタイヤし、手に職をつけようと入学する学生も多い。公費補助を受けながら国家資格が得られる貴重な施設である。医療現場の人材確保、経済・雇用対策の面からも看護学校の定員についてよく検討してほしい。

【都】最近は25歳前後の入学者もおり、ご指摘の通り社会経験を経てからの入学が予想される。頂いたご意見も参考に検討したい。

(『東京保険医新聞』2013年9月25日号掲載)