指導・監査制度の改善へ――日弁連「意見書」をめぐり 協会顧問弁護士団と懇談

公開日 2015年01月25日

27人が参加した懇談会

協会は1月10日、日本弁護士連合会(日弁連)が2014年8月に発表した「健康保険法等に基づく指導・監査制度の改善に関する意見書」の理解を深めるため、協会が個別指導等の際に帯同を依頼している協会顧問弁護士団との懇談を行った。当日は弁護士が6人、協会からは理事・審査対策委員など27人が参加した。

最初に、新井章弁護士(東京中央法律事務所)から日弁連の意見書をどう捉えるかについて話題提供があった。

 意見書は歴史的に重要な文書

新井章弁護士

新井弁護士は、「全弁護士が加入する日弁連が保険医に対する指導・監査に関して重大な人権侵害が行われているとする意見書を発表したことは画期的な意味を持つ。しかも、『診療録の事前指定については医師等が適切な準備を行う時間的な余裕を与えること』『指導の際の録音・録画は保険医の権利として認めること』など、7項目にわたり指摘している改善点については、これまで協会が改善要望を出していることと重なっており、歴史的に重要な文書になるだろう」と指摘した。

指導制度が「経済的な道具」へと変質

その上で、「長年、指導・監査問題に携わってきた経験から照らして、この問題の根本的な原因は、指導について『療養の給付』と『保険診療』の周知徹底に限定されていた旧・指導大綱が1995年に廃止され、新・指導大綱が制定されたことである。新・指導大綱ではそれまでの保険診療のルールの周知徹底に加えて、新たに『診療報酬請求等に関する事項』の周知徹底が加えられた。それにより高点数のみを選定基準にした集団的個別指導が始められ、集団的個別指導を受けた医療機関のうち翌年度もなお高点数で推移した医療機関を今度は個別指導に選定できる仕組みをつくるなど、指導制度が診療報酬請求額を抑制するための『経済的な道具』となってしまった」と述べた。

そして、当面の課題としては新・指導大綱と監査要綱を撤回させ、少なくとも指導内容を限定した旧・指導大綱のような文言に戻すことを要求することの重要性を強調した。

保険医の権利擁護と弁護士の立会権

田辺幸雄弁護士

次に発言した田辺幸雄弁護士(江東総合法律事務所)は、日弁連意見書は歴史的な文書であることは間違いないとしながら、さらに深めてもらいたい点として、弁護士の指導への立会権の問題をあげた。

「同意見書では『指導・監査の透明性の確保、保険医等を防御する機会を確保する観点から、弁護士の立会権が、保険医等の権利として認められるよう改善すべき』とし、行政側は弁護士の帯同や録音について『権利として認められているわけではなく、個別指導を実施する側の裁量によっていつでも拒否できるというのが制度の建前』という把握をしている。しかし、個別指導への帯同は保険医の権利であると同時に、弁護士法第3条(弁護士の職務)で認められた弁護士の権利でもあると捉えるべきではないか。日弁連が編纂している『条解弁護士法』では、弁護士の職務範囲として『一般の法律事務』をあげているが、医療機関に送付される実施通知に『健康保険法第73条…の規定により』実施するとされている個別指導は明らかにこの『一般の法律事務』にあたり、厚生労働省が弁護士の帯同という職務を禁止したり妨害したりするようなことがあれば、現在でも違法であり許されないと捉えるべきではないか」と話した。

懇談会に参加した弁護士ら

他の弁護士からは、「帯同した被指導者が暴言を受けることはなかったが、別のブースから暴言が聞こえてきたことがあり、帯同の抑止効果を感じた」「以前は録音を申し出ると待たせられることがあったが、最近ではスムーズに進行している。録音が定着してきたと感じた」などの発言があった。

参加者からの「弁護士を帯同させると指導の際に不利益を受けると言っている医師もいるが」という質問に対しては、「実際に帯同させて指導結果が悪くなったという話は聞いたことがないし、もしそういう事実があれば明らかな人権侵害にあたるので相談してほしい」と強調した。

指導・監査に関する問い合せは、協会審査対策委員会(TEL 03-5339-3601)まで。

(『東京保険医新聞』2015年1月25日号掲載)