公開日 2015年09月25日
協会は9月9日、東京都知事に提出した2016年度予算等に関する請願に基づき都福祉保健局と懇談した。
予防接種では、MRワクチンの接種率向上に向けて教育庁と連携し、就学時健診での接種状況の確認と接種勧奨等を推進することや、B型肝炎ウイルス予防接種に取り組む区市町村への財政支援を実施すること、医療・介護体制の充実では、都内入院ベッドの増床計画が必要なことや、特別養護老人ホームの増床に取り組むことなど、協会の要望に応える回答が目立った。
B型肝炎ワクチン 都が手上げ自治体に補助
本年3月、WHOは日本が麻疹の排除状態にあることを認定したが、この状態を続けるためには全国に比べ低い東京の接種率を引き上げることが必要だ。協会は①第二期(小学校入学前年度)の接種率向上に向けた勧奨②成人男女へのMRワクチン接種実施などを求めてきた。都が回答したように、教育庁と福祉保健局の連携は一歩前進だ。就学前児童への積極的な勧奨により、接種率向上を望みたい。一方、成人男女の3割~4割が風疹の抗体値が低いというデータもあることから、引き続き、成人男女に対する接種制度の導入を求めていく必要がある。
国が定期接種化に向けて動き出しているB型肝炎ウイルス予防接種は、現在、千代田区、品川区、渋谷区、豊島区の4区が公的助成をしている。B型肝炎ウイルスは、尿・血液、ならびに涙、よだれ、汗から罹患するジェノタイプAが国内で広がっていることが報告されており、とりわけ3歳未満で感染するとキャリアになりやすく、がん化しやすい。
協会はワクチン接種により感染予防が可能であることから、都独自の接種助成制度を求めてきた。これに対して都は、国が定期接種化するまでの間、都の包括補助事業に追加することで、区市町村の取り組みを促したいと回答。本年10月からB型肝炎予防接種にかかる経費も包括補助の対象とするとした。これも大きな前進である。
一方、国の技術的検討結果に従って、対象者を「生後12カ月」としているが、子どものキャリア化を防ぐためにも、協会は3歳未満に対象を拡大していくことを当面求めていく。
8,000床の増床試算 慢性期ベッド削減が前提
都道府県が定める「構想区域」(原則二次医療圏)ごとに2025年の必要病床数を算出するという地域医療構想の策定作業が東京都でも始まっている。地域の入院ベッド数を医療資源投入量(なんと出来高診療報酬の総額の多寡!)で区分し、「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」という4つの機能に分けて算出するというものだ。
さらに構想区域ごとに「地域医療構想調整会議」を設けて、医療構想ではじき出された数字に従って、病床削減を図る仕組みも持ち込まれた。医療機関同士で協議させて、協議の結論に従わない医療機関名の公表や補助金の停止等々、都道府県知事の権限が強化されているのも特徴だ。
協会は、医療費適正化計画と連動するような医療費抑制・病床削減のツールではなく、都民が真に必要としている病床を確保するよう都に求めた。これに対し都は「試算では8,000床程度が新たに必要になる」と述べ、2025年に向けて病床数拡大の方向を示した。
東京都地域医療構想策定部会の試算によると、2025年の必要病床数に対して東京全体では現在約8,000床不足している。しかも国の方針通り慢性期の病床を9,000床も減らした後の数字だ(表1)。
現在でも療養病床などの慢性期ベッドと老人保健施設や特別養護老人ホームなどの公的介護施設の数では、東京都は全国最低である(表2)。高齢者人口が急激に増える東京で、慢性期病床の削減は地域医療を破綻させかねない。
在宅療養には病院のバックアップが不可欠だ。協会は引き続き地域の慢性期病床と介護施設の確保・拡充を求めていく。
(『東京保険医新聞』2015年9月25日号掲載)