協会、「集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を撤回せよ」声明発表

公開日 2014年07月15日

集団的自衛権の行使容認を安倍内閣が閣議決定したことを受け、協会は7月4日、閣議決定の撤回を求める要望書(下記参照)を安倍首相宛に提出した。
一内閣の閣議決定で解釈改憲を行おうとする姿勢には、国民から厳しい批判の声があがっている。

 

2014年7月4日

集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を撤回せよ

内閣総理大臣
安倍 晋三 殿

東京保険医協会
会長 拝殿 清名

 

7月1日、政府は集団的自衛権行使を認める閣議決定をした。これまで安倍首相は「強い日本」、「日米同盟強化」を掲げ、憲法の全面改定、そして96条の改定を打ち出し、国家安全保障会議の設置、特定秘密保護法の成立、武器輸出三原則の見直しと安全保障政策の実務的な抜本的見直しを進めた。安倍首相の目的は米国と一体となり海外での武力行使や紛争への軍事力による介入を可能とすることにあり、「専守防衛」という国是を踏みにじるものに他ならない。

集団的自衛権の行使は、憲法9条に違反しているというほかなく、政府解釈においても繰り返し違憲であることが確認されてきた。集団的自衛権を認めるのであれば憲法改正が必要不可欠であるはずだ。

にもかかわらず、政府は集団的自衛権について正規の憲法改正手続きを経て国民の判断を問うことなく、一内閣による憲法解釈の変更という形で行った。これは憲法によって権力を縛るという立憲主義を否定するものだ。

さらに議論の進め方についても、集団的自衛権を認めたという既成事実を作るために「紛争地から避難する邦人を輸送する米艦艇の防護」、「米国本土を狙った弾道ミサイルの迎撃」といった現実離れをした極端な事例を持ち出し、打ち出した議論を数日のうちに撤回するという粗雑な姿勢で議論を進めていった。国民からの批判、懸念の声に対しては、「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」等の極めて幅の広く、時の政府の判断によって恣意的な解釈がされる危険性が極めて高い文言によって、集団的自衛権の行使は「限定」されていると述べるなどごまかしに終始してきた。

そもそも集団的自衛権を行使するということは、日本が武力攻撃をされていないにもかかわらず他国のために戦争をすることである。日本が集団的自衛権を行使すれば、国際法上、日本国内全ての自衛隊の基地や施設が軍事目標となり、そこへの攻撃に伴う民間への被害も生じうる。戦地では日本国民が人を殺し、殺され、人殺しに関与することとなるだろう。

このような不誠実で結論ありきの議論で立憲主義を否定し、国民の生命・尊厳を徒に脅かす今回の閣議決定を我々は許すことはできない。

東京保険医協会は国民の命、健康を守る立場から、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に対し、強く抗議し、その撤回を求めるとともに、政府に対し閣議決定を具体化する今後の法整備を許さない運動を進めていく。

以上

 

 

「人々の間から議論が減っている」

片倉 和彦 協会理事

片倉 和彦

(協会理事)

「青年たちはいつでも本気に議論をしない。お互ひに相手の神経へふれまいふれまいと最大限度の注意をしつつ、おのれの神経をも大切にかばってゐる。」(太宰治「道化の華」)

今の集団的自衛権行使容認などのきな臭い流れのなかで最も気になるのは、人々の間から議論が減っている、ということです。

東京保険医協会の若い事務局員に先日聞いたところ、学生時代に社会のことや政治のことで周囲と議論することはなかったとのこと。ちなみに法学部でした。

これは心理的なことだけではなくて制度の問題でもあって、たとえば先日ある大学の先生に取材に行ったところ、そこでは、学生が話し合いをするときには大学当局に届出が必要、という校則がある由。実に心配です。

(『東京保険医新聞』2014年7月15日号掲載)