公開日 2014年12月25日

須田 昭夫
(東京保険医協会政策調査部長)
第47回衆議院選挙の開票は12月14日夜、東京都心にも初雪が舞う寒さのなかで実施された。
選挙の争点は「アベノミクス」という造語が覆い隠した。しかし議論が必要なことは山ほどあった。消費増税、企業減税、年金、医療、介護、福祉、沖縄新基地、憲法解釈、集団的自衛権、特定秘密法、原発再稼働、放射能、被災地復興、エネルギー、リニア新幹線、自然保護、1票の格差、労働法制、育児子育て、女性の力、TPP、どれを取っても国会での討論が不足している。
「私が最高権力者」だという強硬姿勢によって、議論が抑圧されたことが、低投票率の一因だったかもしれない。国会にも国民にも、無力感やしらけきった気分があったといわれる。
国民の意思を示す最強の手段は選挙である。まっとうな民主主義が押しつぶされそうになっている時に、棄権は本当に「危険」だ。
選挙の結果、自公与党の議席数は変わらず、与党が約3分の2の議席を維持した。しかし投票率は52.66%という戦後最低を記録した。
全有権者数に占める得票数の割合、「絶対的得票率」をみると自民党は比例代表選挙でわずか17%、小選挙区でも25%の得票に留まった。少ない得票で圧倒的多数の議席を獲得するのは、現行の選挙制度の欠陥である。与党はいわば冷めたピザであることを、謙虚に自覚するべきである。
自民党の悲願は、単独でも憲法改正の発議ができる317議席獲得であるが、今回も叶わなかった。そればかりか、改憲姿勢を明確にする〔自民+次世代〕の議席数は、314から292に大きく減少した。
多忙な年末に突然持ち上がった選挙で、野党の体制は整わず解党する政党まで現れた。
民主党は11議席増の73議席となったが、自民批判票の受け皿になれなかった。政策的に自民党との違いが見えにくく、政権を争うつもりなら、過去を清算する必要があるだろう。
維新の党は公示前を1つ下回ったが41議席を獲得した。根強い支持を受けていることが示された。今後の指導力に注目したい。
共産党は議席数が2.5倍の21議席となり、単独で法案を提出する権利を獲得した。的確な情勢分析と提案力で国政に与える影響が期待される。
重要法案が審議される来年の通常国会での論議を注視したい。
(『東京保険医新聞』2014年12月25日号掲載)