医療機関の防火体制充実のための診療報酬上の措置及び財政支援に関する要望書

公開日 2013年11月14日

2013年11月14日

内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
厚生労働大臣 田村 憲久 殿
財務大臣 麻生 太郎 殿


東京保険医協会
会長 拝殿 清名
病院・有床診部部長 細田 悟

 前略 国民医療の確保に関するご尽力に敬意を表します。

 さて、2013年10月11日に福岡の有床診療所において入院患者を含めた10人が死亡する火災事故が起きました。大変痛ましい事故であり、火災原因や、多くの方が亡くなられた原因を究明し、再発防止を図ることが極めて重要です。

 不慮の火災から入院患者の命と健康を守ることは各病院・診療所の責務であり、各々の施設が可能な限りの防火対策を講じることは言うまでもありません。そして、二度とこのような悲惨な事故を再発させないためには、火災の発生を未然に防ぐとともに、万が一火災が発生しても初期段階で鎮火させる万全の対策が必要です。

 有床診療所は長期入院が必要な高齢者の受け皿として、地域医療を支えています。しかし、今回火災事故に見舞われた博多区・安部整形外科に限らず、その経営は極めて苦しいのが現状です。この20年ほどで6割の有床診療所が廃業したといわれています。厚労省によると、1990年に2万3589あった有床診療所は、2013年には実に9471に激減しています。日本医師会の2011年の調査でも、26%が赤字と回答。スタッフの確保が難しいことや、施設の老巧化が指摘されています。一方で、入院基本料も30日超・看護師7人の場合でわずか511点に過ぎません。

 診療報酬が低くおさえられてきた結果、有床診療所だけでなく無床診療所や中小病院においても防火設備の維持・更新のための費用を捻出することが極めて困難な状況にあります。とりわけ有床診療所においては入院病床に係る費用を外来診療収入で補うことにより、かろうじて経営を維持しているのが現状です。

 病院・診療所は、地域住民・患者の命と健康を守る重要な砦であり、少なくともその構造や設備は安全で安心なものでなくてはなりません。状況の打開のため私たち東京保険医協会病院・有床診部は以下の項目につき強く要望致します。

 一.有床診療所において夜間においても安心・安全な医療を確保できるよう、有床診療所入院基本料の抜本的引き上げ又は加算点数を新設するなど、当該費用を担保すること。

 一、医療機関の防火設備の維持や、更新を行う費用を補填すること。

 一.医療機関に新たに防火設備の設置を義務付ける場合は、必要な費用補填と無理のない十分な期間を保障すること。

 一、防火設備の設置、維持、更新のための無利子融資制度を創設し、一定期間返済を猶予すること。

以上
医療機関の防火体制充実のための診療報酬上の措置及び財政支援に関する要望書 [PDF:118KB]