福島第1原発事故・東日本大震災被災者の医療保険、介護保険の負担金等に関する要望書

公開日 2014年01月31日

2014年1月31日

内閣総理大臣 殿
厚生労働大臣 殿
厚生労働省保険局長 殿
厚生労働省保険局医療課長 殿

東京保険医協会
会長 拝殿 清名
研究部長 申 偉秀

 2013年12月24日に復興庁から公表された全国の避難者等の数は約27万4,000人となっています。2011年12月現在の約33万3,000人から5万9,000人余りが減少したものの、未だに膨大な数の方々が避難生活を送り震災前の生活には戻っておらず、復興完了とは到底言えない状況です。

 宮城県や岩手県の被害を受けた漁業・農業地帯では、単に建物を建て替えればよい済む問題ではありません。住民が望む震災前のような自然と共存する生活への復帰にはまだまだ時間がかかります。また県外への避難者は福島県から約5万人、宮城県から約7,000人、岩手県から約1,500人で、福島県の県外避難者(自主避難者も含む)が一番多くなっています。福島第1原発周辺の市町村は依然として避難地域とされているところや、解除された地域でも放射線濃度が局所的に高い所があるなど避難が長期化しているケースも多く見受けられます。これは福島第1原発事故が、汚染水漏れなど実質的に終息しておらず、その影響によるものです。

 復興の長期化に伴い、避難している場合はもちろん、避難していない場合も含め、福島第1原発事故や東日本大震災の被災者は、いまだにさまざまな悪影響を受けています。震災前の生活または同等の生活を確保できていないことから、心身ともに健康を損ない医療や介護を必要とする者が後を経ちません。このような状況にも関わらず、被災者の生活に関する支援においては市町村民税、県民税、固定資産税の減免などは打ち切られ、生活再建資金(加算部分)、生活福祉貸付の特別貸付など継続されている公的支援は先細りの状態です。また被災者の健康に直結する医療・介護関連の支援も医療保険の保険料・一部負担金、介護保険の保険料・利用者負担金に関して一部を除き、免除や減免は打ち切られています。現在公的支援が継続されているのは、2014年2月末まで福島第1原発事故被災者の医療保険の一部負担金免除、2014年12月末まで岩手県の国保・後期高齢者の医療保険の一部負担金免除などにとどまります。

 今後、厚労省復興対策本部では原発事故被災者に対し、国が全額財政負担をして医療保険・介護保険の窓口負担・保険料の免除を延長する予定としています。対象者と期間は①福島第1原発事故避難指示区域等の被災者と、上位所得者を除く旧緊急時避難準備区域等の被災者は2014年度1年間、②上位所得者である旧緊急時避難準備区域等の被災者は2014年度の前半の半年間です。旧緊急時避難準備区域等では上位所得者の免除期間が半年間のみで、所得区分により免除期間が半分に減らされているのは問題です。

 また現在一部負担金免除等が実施されていない宮城県では、免除の復活の要望が非常に多く、県内全域で復活を目指した国等への要請が繰り返し出されているような状況です。ただし、復活といっても、住民税非課税の低所得者、家屋半壊以上などが免除対象と考えられ、一般・上位所得者は対象者から除かれます。対象者は絞り込まれる方向で検討が進められています。

 さらに、原発被災者への支援は国が全額負担して一部負担金等の免除が行われますが、その他の場合は免除した額について、国が8割、県が2割負担とされており、被災した県に過重な財政負担がかかるのは非常に問題です。

 健康を維持するために重要なのは、必要なときに医療や介護が受けられるような支援をすることであり、そのためには国が責任を持って全面的な財政負担をすることが是非とも必要です。さらに免除対象を国保加入者や後期高齢者のみに限定することや、上位所得者を除くなどの所得制限の導入はすべきではありません。また免除期間も有限ではなく復興完了までとすべきです。

 つきましては以下の事項を、保険の種別や所得状況に関わらず、国が責任を持って速やかに実施するよう要望いたします。

  1. 福島第1原発事故被災者の医療保険の一部負担金免除を3月以降も、所得状況や保険の種別に関わらず福島第1原発事故が実質的に終息し復興が終わるまで継続すること。
  2. 原発事故被災者以外の東日本大震災被災者に係る医療保険の一部負担金免除を直ちに復活させ、所得状況や保険の種別に関わらず復興が完了するまで継続すること。
  3. 福島第1原発事故被災者、その他の東日本大震災被災者の医療保険と介護保険の保険料の減免を復活させ、復興が完了まで継続すること。

福島第1原発事故・東日本大震災被災者の医療保険、介護保険の負担金等に関する要望書[PDF:110KB]