〔都知事宛〕「20代から40代の全ての男女へのMRワクチンの接種助成」と「先天性風しん症候群(CRS)児および家族への対策」を求めます

公開日 2014年04月11日

2014年4月11日

東京都知事 舛添 要一 殿
東京都福祉保健局長 川澄 俊文 殿

東京保険医協会
会長 拝殿 清名

 

 2012年から2013年にかけて風しんの大規模な流行が発生し、その多くが風しんに対する免疫を持たない20~40代の成人男性間を中心に感染が広がりました。東京都はいち早く「風しん予防接種・先天性風しん症候群発生防止のための緊急対策」を発表し、区市町村が行う成人への風しん予防接種(MRを含む)経費を補助する画期的な取り組みを実施されました。残念ながら「妊娠している女性の夫」(旧・区分B)については、2013年9月末までで補助事業が終了し、以降は区市町村の独自財政による取組みとなったものの、その意義は大変大きいものであったと考えます。

 当協会はかねてより20~40代の全ての成人男女に風しんの予防接種を実施することが重要であり、むしろ女性のみを対象にした予防接種では風しんの流行を防げない、ひいてはCRSの発生を防げないことは過去の例を見ても明らであると考えます。少なくとも、2014年度における東京都の区市町村包括補助事業「先天性風しん症候群発生防止対策(19歳以上)」において、「妊娠している女性の夫」(旧・区分B)についても対象に加えるよう要望します。

 さらに、CRS児およびその保護者への対応は急務です。国立感染症研究所(NIID)の発表では、2012年から2014年3月26日までに判明しただけで44例のCRS児が報告されており、うち16例が東京都内の子どもです。CRS児の早期発見やカウンセリング体制の確立に向けた試みを進める自治体も出てきています。このような取り組みが全都に広がるように、実際に出生したCRS児および保護者への支援について、育児・保育体制の整備、保護者に対するカウンセリング等を含めた養育支援、そして医療費助成や就学援助などの公的支援制度を東京都の責任で進めるべきです。

 2014年1月以降に海外からの帰国者を中心に麻しんの急激な感染が広がり、文京区の日本医科大学付属病院では院内感染により病棟閉鎖に追い込まれました。東京は2020年に「東京オリンピック・パラリンピック」を控えており、国による2020年度までに風しんの排除を目標に掲げた長期的な対策では遅く、今後海外からの渡航者がかつてない規模の増加が見込まれるなか、開催地である東京において社会全体で麻しん・風しん対策を講じることは不可欠ではないでしょうか。

 以上のことから、下記の項目の実現を要望します。

1.2014年度における東京都の区市町村包括補助事業「先天性風疹症候群発生防止対策(19歳以上)」において、その対象を「妊娠を予定・希望する女性」に限るのではなく、また「抗体検査」によって区別することなく、20~40代の全ての成人男女を対象に区市町村へのMRワクチン接種経費を補助すること

2.前1項の具体的な対策として、国により2008年から5年間の時限措置として実施された麻しん定期接種(第3期・第4期)の成功例にならい、25歳、30歳、35歳、40歳、45歳到達時に全ての成人男女を対象としたMRワクチンの接種経費を補助すること

3.抗体検査による選別を行う場合でも、「妊娠を予定または希望する女性(抗体検査等で低抗体価であった者)」に限らず、少なくとも「妊婦の夫」(旧・区分B)についても同補助事業の対象に追加すること

4.2014年度の東京都における区市町村包括補助事業「風しん抗体検査の勧奨経費補助」(=区市町村において定期予防接種第3期・4期未接種の女性に対する抗体検査の受検勧奨を行う場合の経費補助)を実施する場合、女性だけでなく男性についてもその対象とすること

5.CRS児および家族への対策として、情報提供を行うだけでなく、出生したCRS児の育児・保育体制の整備、保護者に対するカウンセリング等を含めた養育支援、そして医療費助成や就学援助などの公的支援制度を東京都の責任で整備すること

以上

「20代から40代の全ての男女へのMRワクチンの接種助成」と「先天性風しん症候群(CRS)児および家族への対策」を求めます[PDF:16KB]