雇用トラブル未然に防ぐ 人事労務セミナーを開催

公開日 2016年07月05日

「雇用トラブルを防ぐには職場の雰囲気作りも大切」と石川氏

協会経営税務部は6月16日、「人事労務セミナー」を開催し、63人が参加した。

テーマは「雇用トラブルを未然に防ぐには」。講師は日本医業総研・主任コンサルタントの石川恵氏(社会保険労務士)を招いた。

石川氏は労働契約は“労働者と使用者が対等の立場における合意に基づいて締結するもの”として、「給与は、最初から高く設定してしまうと容易には下げられないが、低く設定するとよい人材が集まらない。世間相場を少し上回る程度がよい」と語った。さらに、労働契約法第16条の規定=「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」により、解雇は簡単には認められない。解雇対象の従業員に対し就業態度について再三指導したか、またその記録(指導改善書)をとることが証拠として重要となる、と強調した。

雇用トラブルをなくすためにも就業規則で基本的なルールを明示しておくことが必要だ。さらに日頃の従業員教育として、“患者にとってよい環境を提供することが当院の役割”という観点で職場ルールを浸透させることも肝要である。直接言いにくいことは自院のハンドブックを作成してはと、アドバイスし例示した。

『患者が来院したら必ず立ち上がり、笑顔で挨拶してください』

『保険証は両手で受け取ってください』

『報告・連絡・相談を、告げ口と捉えてはいけません。批判の視点ではなく、改善の視点で行うべきもの。自分に不利益になることを恐れ、報告・連絡・相談をためらってはいけません』などなど。

質疑応答では、「8時30分始業開始で、5分前には出勤するよう求めることは違法だといわれたらどうするか」との問いに石川氏は、「就業開始が8時30分とされているのなら、労基法の観点では違法となる。職場の従業員教育、雰囲気作りのなかで浸透させていくしかない」と述べた。また、「36協定は、一度労基署に提出すれば更新の必要はないか」との問いに、「一年に一度提出の必要がある」とした。

(『東京保険医新聞』2016年7月5日号掲載)