熊本地震に伴う被災者窓口負担・減免特別措置を求める緊急要望

公開日 2016年04月19日

2016年4月19日

厚生労働大臣 塩崎 恭久 殿

東京保険医協会
会長 鶴田 幸男

 平成28年(2016年)4月14日から発生している熊本地震は、阪神・淡路大震災に匹敵する激しい揺れと度重なる余震によって多くの家屋が被災し、インフラが寸断されました。避難者は10万人以上、一部報道では20万人に達しているとも言われています(2016/4/16毎日新聞)。指定避難所以外の場所で避難生活を送っている被災者も多く、また行政機関自身が被害を受けていることもあり、自治体ではすべてを把握し切れていないのが現状です。

 国におかれましてもすでに取り組まれているところとは存じますが、一刻も早く、これら支援を必要とする被災者の状況把握を進めるための人員・物的支援を行い、被災者の元へ確実に支援物資を届けることが急務です。
私たちは、都内5,400人の保険医で構成する団体です。医療者の立場から、本日は被災者の生命と健康を守るために下記内容を緊急要望いたします。

被災者の医療費窓口負担に猶予・減免特別措置を講じること

 先般、厚労省から事務連絡「平成28年熊本県熊本地方の地震による被災者に係る被保険者証等の提示等について(平成28年4月15日)」が発出され、被災者が保険証を携帯せずに受診しても保険診療扱いにできるとされました。しかし、今回の震災に伴う被害は甚大であり、住居の損壊のほか、ライフラインの寸断により被災者の日常生活には大きな負担がかかっています。度重なる余震を恐れて車中避難を続けた結果、エコノミークラス症候群で亡くなる方まで出てきており、避難所でのノロウイルス感染事例も複数報告されており、医療の必要性は今後ますます高まるばかりです。

 治療を必要とする被災者が受診機会を逸することのないよう、被災者の医療費窓口負担については早急に、東日本大震災と同様、猶予・減免の特別措置(東日本大震災では実質免除)を実施することを要望します。

災害医療関連通知を被災自治体・被災者へ周知徹底すること

 東日本大震災の際には、厚労省の各種被災者医療に関する通知は、5月に入っても被災地に周知されていませんでした(宮城県石巻市雄勝など)。事務連絡を発出するだけでなく、被災地の関係各機関へ確実に直接情報が届くように周知徹底の対策を講じてください。

以上

熊本地震に伴う被災者窓口負担・減免特別措置を求める緊急要望[PDF:162KB]

※ 被災者医療については後日通知が出され、猶予・免除の取り扱いが決まりました。詳しくは「追記」をご覧ください。


参考資料:被災者医療について(東日本大震災の例も含めて)

1.災害医療について

日本では地震、津波、台風、火山の爆発など様々な災害が発生し、そのたびに尊い命が奪われ、怪我人も多数発生しています。

被災者支援対策として、住宅・生活支援のほか、1959年(昭和34)の伊勢湾台風以来、被災者の保険診療における特例措置(一部負担金の免除等)や、被災医療機関における概算請求などの施策が講じられてきました。

1995年の阪神淡路大震災のほか、近年では2011年2月の新潟豪雪、3月の東日本大震災、2014年9月の御嶽山噴火等において、被災者医療の特例通知が出されています。

2.東日本大震災被災者の医療特例措置の概要

2011年3月の東日本大震災では、保険診療について主に以下の特別措置がとられました。

(1) 資格確認の特例(被災者の保険証なし受診を保険診療扱いとする)
(2) 被災医療機関における診療報酬の概算請求
(3) 一部負担金等の支払猶予・免除の取り扱い

当初、患者の窓口一部負担金は「猶予」とされましたが、その後、下記条件に該当する場合は「免除」とされました。

【以下のいずれかに該当する方】
① 住家の全半壊、全半焼又はこれに準ずる被災をした方
② 主たる生計維持者が死亡し又は重篤な傷病を負った方
③ 主たる生計維持者の行方が不明である方
④ 主たる生計維持者が業務を廃止・休止した方
⑤ 主たる生計維持者が失職し、現在収入が無い方
⑥ 原子力発電所の事故による政府の避難指示・屋内退避指示の対象の方

 一部負担金の支払猶予・免除については、当初5月末までとされましたが、その後翌年2月まで延長され、以降、居住地域等の条件によって再度延長されるなどしました。

 しかし当時、免除・猶予対象者は何回も追加・改編され、これら通知の周知も不十分であったことなどから、本来は免除されるべき一部負担金を徴収してしまったケースも多発しました。このため、被災者が保険者へ償還払い請求するしくみも整備されました。

 今回の熊本地震でも多くの家屋が被災し、多数の避難者が出ています。

 すでに(1)の通知は発出され、(2)の通知も近日出される予定ですが、東日本大震災の前例にならい、(3)被災者の窓口負担減免措置を早急に整備することが求められます。

参考資料:被災者医療について(東日本大震災の例も含めて)[PDF:143KB]


追記:熊本地震に伴う被災者医療の取り扱いについて

 2016年4月22日「平成28年熊本地震で被災した被保険者の一部負担金の取扱いについて」が発出され、住宅全半壊等の被災者は7月末まで一部負担金の支払いが猶予・免除されることとなりました。

 対象者は、①熊本県全域の市町村国保、熊本県後期高齢者医療、②協会けんぽ、熊本県内に所在する健保組合(いずれも熊本県内に住所がある方)などです。熊本県内すべての市町村国保・介護保険、後期高齢者医療、協会けんぽの方については免除が確定しています。

 詳しくは厚生労働省ホームページをご覧ください。