「鼻腔・咽頭拭い液採取料」「在宅時医学総合管理料等 処方せんを交付しない場合の加算」の算定を著しく制限する疑義解釈の撤回を求める

公開日 2016年05月19日

 2016年5月19日

厚生労働大臣 塩崎 恭久 殿
厚生労働省保険局医療課長 宮嵜 雅則 殿

東京保険医協会
研究部長 申 偉秀


 今改定において検体採取料に「鼻腔・咽頭拭い液採取」(5点)が新設され、インフルエンザや年少者の感染症迅速検査への配慮がなされました。
 ところが、2016年4月25日付で発出された厚労省事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その2)」問19において、同日に複数検体の検査を行った場合でも、この採取料が「1日につき1回の算定となる」との「解釈」が示されました。
 しかし、診療報酬の算定方法を定めた厚労省告示には「1日につき」と限定した文言は入っていません。例えば[D400血液採取]や[D419その他の検体採取「1」動脈血採取]には「1日につき」と告示に明記されていますが、それらと照らし合わせて考えても、鼻腔・咽頭拭い液採取については複数回算定できるとしか読むことができません。法的効力を持つ告示に対して違法な「解釈」を行う、このような事務連絡は到底納得できるものではありません。
 また、たとえば小児の場合、熱発があった際はインフルエンザや溶連菌感染症など、複数の原因疾患を考慮する場合があり、一度に複数の検査を行うことが診療現場では一般的ですが、同点数が1日に何度実施しても1回のみ算定となるというのは、臨床的に不合理です。更に、血液検体は1回の採取によって複数の検査を行うことが可能ですが、鼻腔・咽頭拭い液の場合は、検査キットが採取と検査が一体になっていることが多く、1つの検体を使い回すことは想定されません。今回の疑義解釈通知はこのような実態とも合致しません。


 これまで在宅時医学総合管理料及び(特定)施設入居時等医学総合管理料は「院外処方せんを交付する場合」「院外処方せんを交付しない場合」の区分に分けられ、異なる点数が設定されていましたが、今次改定でこの区分が廃止され、それに伴い「処方せんを交付しない場合は、300点を所定点数に加算する」(厚労省告示より)と規定されました。
 この加算につき、前掲の疑義解釈の問15において、「当該月に処方を行わない場合」は「算定できない」との「解釈」が示されています。
 厚労省告示では「処方せんを交付しない場合」とあるのに、処方せんを交付しない場合でも算定できないことがあると事務連絡で「解釈」するのは、①と同様に適法な行為とは考えられません。また、この加算は在宅時医学総合管理料等のうち院内処方の医療機関の包括点数として入っていたものが、今次改定で加算として分離されたものです。本来処方の有無と無関係であった包括点数を削減するやり方は、在宅医療の推進を掲げる厚労省及び国の方向性とも矛盾するのではないでしょうか。更に、包括点数として今次改定で新設された「小児かかりつけ診療料」は処方せんを交付する場合としない場合に分かれ、「患者の症状又は病態が安定していること等のため同一月内において投薬を行わなかった場合」には処方せん交付しない場合を算定できるとされており、一貫性に欠けるものです。

 上記二点につきましては、厚労省告示では到底解釈し得ない内容を事務連絡で示してきたものであり、なおかつ4月診療分の請求の直前である4月25日に発出されたことで、医療機関には多大な混乱と不満を招いております。また、厚労省告示の内容さえも事務連絡で覆せるのならば、厚労省のその時々の意思で保険診療のルールを決められることになり、保険医療の大きな萎縮へと繋がることとなります。

 つきましては、以下の事項を緊急に実現されますよう要望いたします。

  1. 2016年4月25日付疑義解釈その2の、問15及び問19は撤回すること。

以上

「鼻腔・咽頭拭い液採取料」 「在宅時医学総合管理料等 処方せ んを交付しない場合の加算」 の算定を著しく制限する疑義解釈の撤回を求める [PDF:138KB]