保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【主張】参議院選挙を前にして 嘘のない論戦を期待する

公開日 2016年07月05日

 6月1日、通常国会が閉幕し、7月10日に投開票する参院選に向けて火蓋が切られた。

 毎日新聞が5月30日におこなった調査によれば、参院選で重視する争点としては、医療と年金(25%)、アベノミクス(12%)、憲法改正(11%)などが上位を占めていた。

 65歳以上の高齢者が人口の26%を占める日本では、医療と年金に関心が高いことは当然のことだろう。ましていま、模索中の「地域包括ケアシステム」は、要介護2までの高齢者・有病者を病床から押し出して、在宅化させようとしている。病床を削減し、介護施設への入居を原則要介護3以上に制限し、同時並行で医療と介護の費用を削減すれば、孤立や独居による生活不安が大きくなることは当然だ。

 多くの研究報告によれば、施設入居者を在宅化させた場合、保健医療の財源は約30%増加する必要があるという。入院患者を在宅化させて、その人らしい生活を支えるには、それなりの費用がかかるのだ。その覚悟もなく、むやみに病床を削減してはならない。

 家族介護に要する私的費用を考慮しないのは誤りだ。年間10万人(20万人?)にも及ぶ介護離職は、GDPを年間数千億円も低下させて、国税収入を減少させているはずだ。介護離職した人たちの再就職は困難で、貧困の罠に陥れば、社会的負担はさらに増加する。社会保障を大切にする参議院を期待したい。

 アベノミクスは大企業の利益を増やし、その恩恵が国民を潤すといわれている。しかし大企業が空前の利益を上げることには成功しているが、国民の給与総額はむしろ減少して、国民生活は一向に改善していない。低所得者は負担感の大きい消費税に苦しみ、貧富の格差が拡大しているように思われる。地球の裏側まで行って米国の戦争を支援すると聞けば、「一億火の玉」とか「欲しがりません、勝つまでは」と叫んでいた時代と、どこか似ているような気がする。経済戦争も武力による戦争も国民を幸せにせず、避けるべきだろう。

 アベノミクスが失敗したことを、素直には語れない安倍首相は、参院選前の消費税増税を中止する口実のために、G7では「リーマンショック以来の経済危機に直面している」という考えに同意を求めたが、2017年の、世界とユーロ圏と米国のGDP見通しは、それぞれ3.5、1.6、2.5%であり、ゆるやかな上昇傾向にあることから、各国首脳の賛同は得られなかった。日本のGDPだけがマイナス0.1%と低下しているのは、日本独自の問題があるだろう。消費税増税は延期ではなく、きっぱりと中止するべきだ。

 今回の選挙で自民党は「最大の争点はアベノミクスを前に進めるのか、後戻りさせるのか」と、手垢にまみれたアベノミクスを争点に押し出した。しかし本当の争点は、憲法の明文改定を目ざし、安保条約と日米地位協定のさらなる強化、戦争法制の具体化とTPPだろう。

 政治的に、米国にノーと言えない日本を、TPPによって経済的にも米国に従属させ、若者の命までも米国の戦争に差し出す国にしてよいのか、ということである。平和主義、人権主義、国民主権という、日本国憲法の精神を堅持することを望みたい。本質を突く論戦を期待する。

(『東京保険医新聞』2016年7月5日号掲載)

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