公開日 2016年10月25日
先日衝撃的な報道を眼にした。日経新聞によると、同社の試算では日銀と年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を合わせた公的資金が、東証一部上場企業の4分の1社の筆頭株主になったという。また東京新聞によると、米通信社ブルームバーグの試算では、日銀が来年末には電通や住友不動産、オリンパスなど55銘柄で筆頭株主になる見通しとのこと。
さらにGPIFは現在でも三菱UFJ、三井住友、みずほ各フィナンシャルグループの筆頭株主で、トヨタ自動車の第二位の大株主であるという。アベノミクスに基づく大規模金融緩和は、日銀による国債の大量買入れと、上場投資信託(ETF)の大量購入が柱である。さらに2014年10月からはGPIFの資産構成を変更し、国内株12%、外国株12%の比率から国内外株50%と倍以上に増やしている。
それでも景気は良くならず、今年に入りマイナス金利という奇策を導入したが、金融機関等への副作用が強く、いつまで続けられるかは不透明で、日銀は7月末にETF買い入れを年間3兆円から6兆円に増やしている。
安倍政権は、アベノミクスにより株価が上昇し、経済が良くなったと胸を張るが、実態は公的資金を大量につぎ込んで株価を持ち上げていただけのことだった。
その結果どうなっているか。昨年6月に約141兆1,000億円だったGPIFの資産は、1年で約129兆7,000億円になり、11兆4,000億円も減少しているという(週刊金曜日10月7日号)。日銀の資産は公表されていないが、やはり多額の減少が推測される。
株式相場はギャンブル的要素が大きく、企業の業績、景気などに左右されるうえ、倒産すれば紙切れと化してしまう。その株式にこれだけ大量の公的資金、すなわち国民の税金をつぎ込んでよいのだろうか?
安倍首相は先のサミットで消費税の引き上げ延期の理由として、リーマンショックに匹敵する経済危機が来る可能性を挙げたが、もし本当に危機が到来し株式相場の暴落が起こったとしたらどう対処するのだろうか?これからますます「ふかす」とされるアベノミクス、すでに赤信号がともっている。(銀狸)
『東京保険医新聞』2016年10月25日号掲載