―都福祉保健局懇談(9/15)から― 協会請願に対する東京都の回答

公開日 2016年11月10日

 協会は毎年、東京都予算等に関する請願(左表)を都知事に提出している。9月15日、既報の通り東京都福祉保健局と懇談した。前号につづいて都側の回答を紹介する。
 

 東京都に対する協会の主な請願項目(「2017年度 東京都予算等に関する請願」から抜粋)

・感染症対策

MR予防接種:20~40歳代成人男女への接種実施
B型肝炎予防接種:2016年4月~7月誕生児に対する救済接種
日本脳炎予防接種:生後6カ月からの接種推奨
おたふくかぜ予防接種助成事業への財政支援
里帰り先等で接種した場合の助成制度の促進
定期予防接種の全都広域接種の実施

・健診事業

無保険者状態"者への健診確保

・医療・介護提供体制の確保

地域医療構想への対応
地域の介護提供体制の維持・強化に向けた支援
都内の要支援者 訪問・通所介護サービスの確保
高齢者の住まいの確保

・公衆衛生の確保

柔道整復療養費への正しい理解の促進

・国家戦略特区(東京圏)について

人材・財源・施設等の医療資源は都民の地域医療充実に限定

・公害・環境対策等について

アスベスト被害対策への強化
解体・改修工事業者へのアスベスト対策指導と実態調査
X線検査を含む全ての健診(検診)問診票に職歴欄追加
再生可能エネルギーの普及促進

・医療費の助成等について

子ども医療費の助成拡大と子どもの国保料の軽減
「難病」医療費助成の拡大
「難病」患者の実態に合わせた認定判断基準の運用
「難病」専門の医師による審査員向け講習会の実施
医療費助成制度の申請手続きに関わるマイナンバー記入の改善

・健康保険制度について

国保加入者の負担軽減と広域化に伴う都の役割発揮
無保険状態となる人を出さない取り組み

・医療機関への指導等の改善

医療費助成とマイナンバー 記載なくても申請受理

 今年1月の個人番号制の施行により、医療費助成の申請書類に個人番号の記載が求められるようになった。
 例えば、都の「自立支援医療(精神通院)」の制度を紹介するホームページでは、冒頭に個人番号の重要性を記した膨大な説明が掲載されており、しかも、個人番号未記載でも申請を受け付けるか否かが分らず、肝心な助成制度自体の説明は最後という異常な体裁となっている。
 同様に、「子ども医療(マル乳・マル子)」や「難病医療」など、所管部署によってホームページや患者向けリーフレットも様々で、番号の記載がない場合に申請を受理するか否かがはっきりせず、心配されていた。協会は、マイナンバー記入欄について、空欄で提出した場合にも不利益な取り扱いを受けない旨を申請者へ丁寧に説明するよう求めた。
 これに対して、都側は「やむを得ずマイナンバーを提供できない場合も、その他の書類が揃っていれば申請を受理するよう運用している」と回答。さらに、申請窓口となる区市町村の職員に対しても説明会等で周知をはかっているとした。

柔整・接骨院 広告などルール厳守の徹底を求める

 協会では今年度から「接骨院の広告適正化」を要望している。
 柔道整復師法で定めれている事項以外を広告している看板等が街頭で散見され、本来適切な治療を受けるべき症状の患者が広告を見て安易に接骨院に通院し、重篤な健康被害を受けている事例もある。(2面に続く)
(1面から) 協会は、接骨院で施術を受ける際の留意点を解説したリーフレット等を都民に配布するとともに、接骨院に対して広告などのルール厳守を積極的に働きかけるよう求めた。
 これに対して都の担当者は「すでに都のホームページでの啓発活動をしており、情報提供が寄せられた場合は地域保健所と連携のうえ指導を行っている」と回答、対策を拡充する考えはないことを示した。

アスベスト被害の防止

 昨年11月、横浜市内の慶應大学内の建物改修工事の際に、天井等にアスベスト(石綿)が含まれているにもかかわらず、義務づけられた事前調査や市への届出を行っていなかったことが判明した。都内でも老朽化した都営団地等の解体・建て替え工事が各地で進められており、協会は法律に基づく事前調査等の徹底と、建設業者等への指導を行うよう求めた。
 都側は「昨年度の解体届出数は約1,200件、過去数年でも約1,000~1,500件で推移しており、作業者だけでなく周辺住民にとっても長い潜伏を経て大きな問題になると認識している」とし、すでに年間1千件以上実施している立ち入り検査の体制強化と指導の徹底を約束した。
 さらに協会は、石綿ばく露による肺疾患の早期発見につなげるために、葛飾区の肺がん検診の問診票では「アスベストを扱う仕事をしたことがありますか」との質問を設けている(図)ことを紹介。胸部XP検査に関わる各種検診の際の問診票に「職歴欄」を設けるよう要望した。
 これに対し担当者は「各区市町村の判断であり、東京都として区市町村に指導・助言することは考えていない」と後ろ向きな姿勢を示した。
 懇談のなかで鶴田会長は「医療現場に突きつけられる課題も多い。都民のいのちと健康を守るため、血の通った施策を求めたい」と述べ、医療・福祉の拡充を改めて訴えた。

 

『東京保険医新聞』2016年10月15日号掲載