【投稿】民意なき政権の誕生

公開日 2013年02月15日

須田 昭夫  (新宿区・須田クリニック)

須田 昭夫
(新宿区・須田クリニック)

2012年12月の衆院選の投票率は59.32%で、戦後最低を記録した。そして自民、民主、維新、公明、みんな、共産、未来、その他、合計12党と諸派、無所属が競合して票が分散した。その結果、小選挙区では43.01%、比例代表では27.62%という得票率の自民党が、小選挙区では79%の議席(237)、衆院全体では61.25%の議席(294)を獲得した。

小選挙区制は1位以外の候補者の得票が死票となり、得票がわずかに移動しただけで議席数が大幅に変動する制度である。自民党は前回惨敗した時の得票数を、今回の選挙でさらに200万票もへらしながら、民主党の不振と低投票率によって得票率が39%から43%に上がっただけで、議席数は4倍にも増加した。逆に、小選挙区投票数の53%は、議席に結び付かない死票となった。小選挙区制は民意を正確に反映しないことが、またしても証明された。

2012年12月の衆院選はいわばルールなき選挙であった。選挙の直前になって政党のたち上げや離合集散があった上に、党籍を移動した議員も多かった。同一政党内でも相反する主張がまかり通り、選挙対策としての曖昧な発言が横行し、各党の主張はつかみにくかった。財界受けする特定の個人が過剰に報道され、「政権の枠組み」という言葉が安易に使われ、政権に加わる計画のない党派が無視された。「公平公正」な選挙報道の在り方についての検討が必要だろう。

自民党は多数の議席を獲得したが、安倍普三総裁も「自民党に信任が戻ったのではなく」と認めているように、自民党が前回惨敗した時よりも比例区の得票数が200万票も少なかったことを、再度認識するべきだろう。国民の多数が積極的に自民党を支持したわけではなく、ましてや白紙委任状を与えたわけではない。

選挙中、多くの自民党候補は原発再稼働、消費増税、TPPなどに反対あるいは消極的であったり、慎重ないしは曖昧な発言を行っていた。選挙が終わった途端に原発新設を言い出したり、TPP参入に前のめりとなり、消費増税のためという巨額な公共事業費のばらまきに突き進み生活保護を削減するようでは、国民の神経を逆なですることになる。

「国益」とは「強い企業」をめざすのか「国民の生活」をめざすのか、明らかにするべきだろう。史上最大の内部留保を抱える大企業の陰で、国民の生活は破綻に瀕していることを、しっかりと見つめるべきだろう。

(『東京保険医新聞』2013年2月15日号掲載)