税制改正大綱を決定 消費税 損税対策は先送り

公開日 2013年02月05日

1月29日、政府は2013年度税制改正大綱を閣議決定した。消費税増税を前提に、住宅ローン減税や自動車取得税の見直しなどが盛り込まれたが、負担増に伴う低所得者対策では、必要性が確認されていたにもかかわらず、医療や食料品など8%増税に向けた軽減税率の導入は見送られた。

「大綱」は、懸案である医療機関の損税対策には全く触れておらず、「検討課題」としていた昨年12月の与党税調よりも後退した内容となった。与党政調では「医療関係者、保険者等の意見も踏まえ、総合的に検討し、結論を得る。」としていた。消費税の税率アップは損税拡大の矛盾をさらに拡大する。食料など生活必需品とともにゼロ税率の導入を強く求めていかなければならない。

「4段階税制」は医業収入7,000万円以下

所得税は、現行の所得1,800万円以上を所得5,000万円以上45%に引き上げた。しかし、最高税率は1986年75%、1989年50%、1998年50%(所得3,000万円以上)であり、富裕層への課税強化とはいえない。

その一方で、国内で設備投資を行った企業の法人税減税や、企業の研究開発税の上限拡充など大企業ほど減税になる仕組みを強化。減り続けている賃金に止めをかけるため、12年度に比べ賃金を5%以上増やした企業は増加分の1割を法人税から税額控除できるようにしたが、13年4月1日から16年3月31日の時限措置だ。

医療では焦点の一つだった『社会保険診療報酬の所得計算の特例』(4段階税制)は診療報酬が5,000万円以下でも、自費収入を含めた医業収入が7,000万円を超えると適用外となった。

今回、「4段階税制」の廃止は回避されたものの、診療報酬が抑制される中で、健診や予防接種などの保健事業は医業収入に占める割合が高くなっており、影響を受ける医療機関も出てくる。

なお、保険診療報酬への事業税の非課税措置は引き続き「検討事項」とされた。

医療機関と消費税増税 ゼロ税率を求めよう

消費税の引き上げは医療機関にとっても深刻な損税問題をもたらす。消費税5%による医療機関の消費税損税は医科1件当たり年間で、無床診療所260万円と報告されている(日本医師会調査・2007年度分)。消費税10%はこの損税が倍加することであり、医療機関の経営にとって致命的だ。協会・保団連は損税を回避するため、損税分を申告して還付させる「ゼロ税率」の導入を要求している。ゼロ税率なら医療機関にも患者にも負担は発生しないことからだ。

しかし、損税を医療機関の問題だけにしては国民の理解は得られないし、運動も広がらない。消費税増税と社会保障の「一体改革」は国民に20兆円に及ぶ負担増を課しながら、社会保障に対する国の責任を後退させて、国民同士の助け合いの制度に変質させようとしている。これをストップさせるとともに、国民各層と結びつきながら医療や食料品などの生活必需品すべてに「ゼロ税率」を求める声を、大きくしていかなければならない。

(『東京保険医新聞』2013年2月5日号掲載)