公開日 2013年12月25日
12月8日閉会した臨時国会で、重要法案が続々と成立した(下表)。政府が臨時国会に提出した23法案のうち、20本が成立しており、安倍自公政権が拙速な審議と強行採決の連続で押し切った形だ。
秘密保護法は、燎原の火のごとく広がる反対世論を無視し、国家安全保障特別委員会で審議を打ち切り、強行採決を行うという憲政史上、重大な汚点を残した。
秘密保護法では「特定秘密」を扱う公務員や民間人とその家族や同居人などへの身辺調査が実施され、照会を受けた団体には回答義務があるとされる。医師が国家権力に情報を提供すると知れば、患者は医師の前で真実を語ることができなくなる。自由に物を言えない社会は、戦前の治安維持法の復活さえ想起させる。
協会は12月8日、関東8協会と共同で法案成立に抗議し、速やかな廃止を求める声明を発表した(※)。
プログラム法は社会保障全分野にわたる改悪の中身と工程を示した悪法だ。来年1月の通常国会から、改悪を具体化する法案が次々と提出される。4月からは消費税増税や70~74歳の窓口負担倍増など大幅な負担増が国民に襲いかかる。
協会は国民と共同し、社会保障充実への政策転換を強く求めていく。
※ 保団連関東ブロック協議会「特定秘密保護法成立に対する抗議声明」(2013.12.8)
厚生労働省 | 社会保障改革プログラム法 | 医療・介護・年金などの社会保障を全面的に改悪する工程を示した社会保障の解体法案。 |
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生活保護法改定 | 生活保護不正受給事件の増加を受け、罰則や地方自治体の調査権限を強化する。親族の扶養義務も強化し、生活保護申請の抑制を目的としている。医師に後発品医薬品の使用を促す努力義務を課している。 | |
生活困窮者自立支援法 | 生活困窮者住居確保給付金の創設。地方自治体が仕事と住まいを失った人への相談窓口を設置する。失業者らの就労・自立の支援が目的だが、必要な人が生活保護制度を受給しにくくなるとの指摘がある。 | |
薬事法・薬剤師法改定 | 医薬品のネット販売を解禁。 | |
内閣官房 | 特定秘密保護法 | 機密情報を漏らした公務員への罰則を強化するだけでなく、「特定秘密」を知ろうとする行為も、「特定秘密の取得行為」として、処罰の対象になる。マスメディアの取材活動が厳罰の対象になる可能性もある。「特定秘密漏えいの教唆、扇動、共謀」と判断されれば処罰の対象に。自由な取材や正当な内部告発を著しく萎縮させることになる。「特定秘密」を取り扱う人のプライバシーを調査し、管理する「適性評価制度」も規定。調査項目は、外国への渡航歴や、ローンなどの返済状況、精神疾患などでの通院歴…等々、多岐に渡る。本人の家族や同居人にも調査が及ぶこととなり、一般市民の個人情報が収集・管理される。 |
国家安全保障会議(日本版NSC)法 | 外交や安全保障政策をめぐる総理官邸の機能を強化する国家安全保障会議(日本版NSC)を新設する。総理の下に権限と情報を集中させ、アメリカとの関係を強化。 | |
国家戦略特区法 | 大胆な規制改革などを行う「国家戦略特区」を導入。国際的に企業活動がしやすい環境を整備する。規制緩和と大企業優遇税制を強力に推進する。 | |
経済産業省 | 産業競争力強化法 | 特例的に規制緩和を認める企業版特区制度「企業実証特例制度」の新設などが柱。医療など営利企業が参入できない分野への新規事業参入にあたり、適法かどうかを事前に照会できる「グレーゾーン解消制度」の創設も盛り込み、医療・健康分野などへのビジネス拡大を狙う。 |
電気事業法改定 | 「発送電分離」に向けた電力システム改革の第1段階として、全国規模での電力需給調整を行う広域系統運用機関を設立する。資本分離と所有権分離には踏み込んでおらず、分離した発電会社、送配電会社、小売会社を持ち株会社の下に置くことも可能であり、「グループ一体経営」が懸念される。 | |
防衛省 | 自衛隊法改定 | 海外での争乱など緊急事態で邦人の陸上輸送を可能にする。陸路を装甲車などで邦人を輸送できるようにした。 |
文部科学省 | 高校無償化廃止法 | 所得制限(年収910万円以上の世帯)を導入し、無償化を廃止。無償化に該当する世帯は、所得証明書の提出が必要となる。 |
国土交通省 | 日本船舶警備特措法 | アフリカ・ソマリア沖で多発する海賊対策として、日本の船舶に武装した警備員を乗船できるようにする。 |
農林水産省 | 農地中間管理機構法 | 都道府県段階に農地中間管理機構を整備し、規模拡大や農地の集約化を進め、企業参入を促す。 |
公正取引委員会 | 独占禁止法改定 | 公取委の審判制度を廃止。公取委の処分に対して企業は直接地方裁判所に提訴できるようになる。 |
議員立法 | 国土強靱(きょうじん)化基本法 | インフラの老朽化対策や防災・減災を名目に全国で大型公共事業を推進する。民間資金を積極的に活用。 |
研究開発力強化法改定 | 労働契約法の特例を設け、不安定雇用を温存、拡大する。大学などにおける有期契約研究者の無期転換権の行使ができるようになる期間を、5年から10年に延長する。 | |
がん登録推進法 | 全国の医療機関に、がん患者の情報提供を義務づける。がん患者の情報を国がデータベースに記録し、治療や予防に活用する。がん患者の本人同意なしに、実名で病状や治療内容などが国に一元管理される。 | |
首都直下地震対策特措法 | 大型地震への対策を名目に、大型開発を推進する。 |
(『東京保険医新聞』2013年12月25日号掲載)