都議選 6/23投票――医療・福祉が日本一の東京を

公開日 2013年06月15日

東京都議会議事堂(手前)と東京都庁

東京都議選(定数127)は6月14日に告示され、23日が投票日となる。有権者の力が問われる季節がやってきた。

東京都の総予算は約12兆円、スウェーデンの国家予算と肩を並べた上に、8,700億円もの積立金もある。石原都政を引き継いだ猪瀬都知事は独自色を出そうとしており、都議候補者の態度が注目されている。

5月7日の記者会見で猪瀬都知事は「安倍首相がアベノミクスのピッチャーなら、東京はキャッチャーとして、国際戦略特区などの事業を実施してゆく多くの現場を持っている」と語った。積極的な公共投資で景気浮揚をねらうアベノミクスに協力する猪瀬都知事は、アジアヘッドクオーター特区構想、3環状道路の建設、国際コンテナ戦略港湾整備などの巨大開発事業を推進しようとしている。

巨大開発事業 総事業費の31%占める

関越道から東名高速までの16kmを地下トンネルでつなぐ東京外郭環状道路は、建設費は1m1億円。地上分の建設費を含めると、総事業費が約2兆円にのぼる巨大事業である。

猪瀬都知事が今年1月に発表した「2020年の東京へのアクションプログラム2013」は、総事業費2兆6,800億円のうち、巨大開発土木事業が31%の8,330億円を占めている。その一方では高齢者対策に800億円、子育て支援や少子化対策に646億円、若者に対する人材育成や雇用対策に181億円を投じているが、公共土木事業の比率が大きすぎるのではないかという意見が出されている。都の予算は都民のくらしを支え、応援するものになっているだろうか。

上昇する国保料医療難民を生み出すな

東京都の国民健康保険料差し押さえは約1万7,000件(2010年度)にも及んでいる。国保・介護保険・後期高齢者医療制度の保険料は毎年上昇しており、国保料が払えず保険証を取り上げられる世帯が急増している。保険料値下げや減免制度拡充などの公的支援に踏み出さなければ、医療や介護を受けられない難民がますます増える結果となるだろう。

老人福祉費落ち込む――特養の増設が急務

図 高齢者1人当たりの老人福祉費


高齢者対策はどうなっているのか。東京都の高齢者ひとり当たりの老人福祉費は、この12年間で13万5,000円から10万4,000円へと、23%も減らされた(右図)。老人福祉費を減らしたのは全国で東京都だけだ。

特別養護老人ホームの待機者は4万3,000人にも及んでおり、老人保健施設やグループホームの整備も遅れている。特養の整備費は2008年には26億円まで落ち込んだが、2013年度予算では110億円を計上し、年平均1,300人分が増設されている。しかし高齢化の進展や待機者増加のペースには追いついていない。さらなる増設を期待したい。

猪瀬都知事が目玉政策として打ち上げた「サービス付高齢者住宅」については「中堅所得層向け」であることを都自身が認めており、国民年金のみの収入では対象にならない。経済的な理由で介護サービスを受けられない高齢者も増加しており、高齢者施設の整備とともに、安心して介護サービスが利用できるよう総合的な高齢者対策が急務である。

待機児童解消へ 認可保育園の拡充を

今春、認可保育園に入園できなかった子供は2万3,000人以上に上り、保育施設の充実は緊急の課題だ。東京都社会福祉協議会の調査によれば、8割の保護者が認可保育園への入園を希望している。認可保育園における死亡事故は園児36万人に1人の割合であるが、認可外保育施設では1万5,000人に1人と高い割合になっている。安全と保育の質が保障される認可保育園を都の責任で拡充すべきだろう。

予算の使い道を変え 福祉日本一の東京へ

身近な商店街の振興や中小企業を支援する予算が欲しいという声があり、石原前都知事以来の14年間、都営住宅の新規建設がないことにも苦情がある。認可保育園や特養ホームの大増設など140項目の都民要求は、予算のわずか3%の組み換えで可能だという試算もある。石原前都知事が就任早々「何が贅沢かと言えばまず福祉」と語った考え方は、抜本的に見直す時期が来ている。

本年の都議会初日の6月3日、猪瀬都知事は東京にカジノを誘致する考えを表明した。石原前都知事もカジノ誘致の考えを持っていたことはよく知られているが、日本ではカジノが刑法で禁じられており、実現しなかった。カジノからの都税収入に期待する声もあるが、8,700億円もの積立金がある上に巨大土木事業を計画できる東京都は、税収が不足しているわけではない。予算の使い道を変えれば、「医療・福祉が日本一の東京」の実現は可能だ。いま必要なことは巨大開発よりも、あたたかい福祉の手ではないだろうか。

協会はこれまで都議会各会派にワクチン予防接種の推進、都ぜんそく医療費助成制度の存続、都立病院の直営存続などを求めてきた。各政党、候補者がどのような公約を掲げているのかしっかりと見極めたい。私たちに政治を選ぶ力があるかどうかが、今問われている。

(『東京保険医新聞』2013年6月15日号掲載)