選挙が終われば大増税

公開日 2013年07月15日

国会議事堂

いよいよ参議院選挙が始まった。安倍政権の経済政策アベノミクスは一部の投資家らに巨万の富をもたらしたが、一般庶民に恩恵はないというのが実感だろう。それどころか急激な円安による物価の上昇や電気料金をはじめとした公共料金値上げで庶民の生活は悲鳴を上げ始めている。

選挙後の秋には消費税率を8%に引き上げる判断が行われる。「損税」を負担している医療機関にとり、税率アップは経営基盤を揺るがす死活問題だ。

表1 現在の「損税」負担額(年間1施設あたり)
診療形態 損税額
無床診療所 260.1 万円
有床診療所 561.7 万円
病 院 1億 70 万円

※ 中医協・医療機関等における消費税負担に関する分科会(提出資料より作成)

表2 消費税10%シミュレーション/院外・院内処方の場合(内科) 利益減少額(5%時対比)
  利益減少額(5%時対比)
院外処方 △ 110万円
院内処方 △ 208万円

※ 保険医サポートセンター・奥津年弘税理士の試算による。
※ 院外処方は年5,100万円の収入、院内処方は年7,185万円の収入で試算。

7月4日に厚労省が発表した国民生活基礎調査では、年間所得200万円未満の世帯割合が19.9%と過去最高になり「働く貧困層」が拡大し続けている。安倍首相は「世界で一番、企業が活動しやすい国」にするため、「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型」への制度改革を目指すとしている。労働者を簡単に解雇できるルールづくり、「金銭解雇の自由化」、所属事務所が閉鎖されたら一緒に解雇できる「限定正社員」や、労働時間の制限をはずして際限なく働かせる残業代ゼロの「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入を「成長戦略」として参院選公約に掲げている。これらの諸策は雇用を不安定化させ、「貧困と格差」をさらに拡大させるだろう。

アベノミクスで庶民置き去り

アベノミクスは「富める者が富めば、そのおこぼれで貧しい者にも自然と富が浸透する」という「トリクルダウン」効果を期待してのものだが、果たしてその通りになるだろうか。自民党は参院選政策で「思い切った投資減税」「法人税の大胆な引き下げ」を掲げており、「多国籍企業栄えて民滅ぶ」国へと突き進んでいるのではないか。庶民に「おこぼれ」がまわって来ないことは、小泉改革時代の「実感のない経済成長」と呼ばれた戦後最長の好景気のときから賃金が下がり続けていることからも明らかだ。日本経済を真に回復するには、雇用の確保と賃金保障、社会保障の充実で、国民の生活不安をなくして購買力を温めるとともに、内需産業支援のための財政出動である。

社会保障制度改革推進国民会議は8月21日までに報告書をまとめる予定だ。70~74歳の医療費窓口負担の1割から2割への引き上げ、受診時定額負担の導入(初・再診時100円)、介護保険の利用者負担の1割から2割への引き上げなどが論議されている。選挙後には国民負担増が待ち構えている。

今回の選挙は憲法改定も争点の一つだ。改定のハードルを下げる「96条改定」が持ち出されているが、9条をまともに議論しないで裏をかくやり口には、9条改憲論者も反発している。

選挙戦で使われるキャッチフレーズやマスコミの報道に踊らされず、日本の針路を見極めたい。

(『東京保険医新聞』2013年7月15日号掲載)