【シリーズ】図表で見る東京の国保②「40年間で7割減った国庫負担」

公開日 2014年09月05日

図  国保会計の国庫負担率と保険料(東京)

1970年から2012年までの区市町村国保会計に占める国庫負担率と23区の一人当たり保険料の推移を見た(図)。1970年当初は国保会計収入の6割近くを占めていた国庫負担が毎年下降し、2012年には2割にまで削減されている。その一方で保険料は上がり続けている。

1970年から1980年にかけて急増しているのは算定方式が変わったからだ。1970年当時、23区は収入に応じて保険料が決まる「所得対応」方式を採用していたが、1980年に「医療費対応」方式となり、保険料は2万4,000円に跳ね上がっている。1984年には国庫負担率が医療費総額の45%から35%に下げられた。このため1985年は3万7,000円へと上昇し、1990年は5万円台となった。介護保険がスタートした2000年には介護保険料の上乗せと、23区国保に対する都の財政支援の見直しにより8万円台となり、2012年は10万円台を超えている。

国保財政の悪化は高齢化による医療費増大だとして、2008年に後期高齢者医療制度が導入され、国保から後期高齢者が切り離なされた。しかし、国保財政は改善されず、保険料の上昇にも歯止めがかかっていない。その最大の原因は図表にあるように国保財政の基盤である国庫負担が縮小したことにある。

ところが「骨太の方針」(2014年6月)は、社会保障について「中期的に受益と負担の均衡を目指す」と明記し、国庫負担をさらに抑制しようとしている。5月に出された財政制度等審議会報告には「我が国社会保障制度は、社会保険方式を採りながら、保険料負担とは別に『公費負担』に相当程度依存して」おり、「我が国財政の悪化の最大要因となっている」と決め付けている。そして、「給付と負担の均衡を図る改革を進めていく必要がある」とした。「給付と負担が均衡」する制度とは民間の「保険原理」そのものである。

年齢構成が高く医療費水準が高い、所得水準が低いといった加入者で構成される国保に、給付と負担を均衡させる「保険原理」を持ち込めば、保険料はさらに上昇する。加入者が保険料の上昇を嫌えば給付範囲を限定するしかない。公的保険による給付を抑え、国庫負担を削減しようというのが政府の狙いである。

憲法25条は国民一人ひとりの生存権の保障を国に求めているにもかかわらず、国は社会保障の理念を変質させ、その責任を放棄する立場を鮮明にしている。このような姿勢を改めさせ、減らされ続けてきた国庫負担を元に戻し、「都民が払える保険料」にすることが求められている。

【シリーズ】図表で見る東京の国保③「国保広域化で保険料40%上昇」

(『東京保険医新聞』2014年9月5日号掲載)