後期高齢者医療制度 平均4.6%の値上げ 天井知らずの保険料

公開日 2014年02月15日

東京都後期高齢者医療広域連合議会は1月31日に開催された定例会で、2014・15年度の保険料値上げ案を可決した。

均等割額は2,100円、所得割率は0.79ポイントそれぞれ引き上げられ(表1)、1人当たりの平均保険料見込額は年間4,282円値上げになり9万7,098円となる見込みだ(表2)。

表1 後期高齢者医療制度 保険料の増減(東京都)

当初は、1人当たり平均約1万円の値上げ案が提示されていたが、財政安定化基金の残高211億円のうち145億円を活用し、値上げ幅を約半額に抑えた。

31日の定例会には「後期高齢者医療保険料の引き下げを求める陳情書」が6本提出されたが、いずれも不採択となった。
高齢者の生活は逼迫

昨年10月から年金支給額の引き下げが実施され、全国の高齢者11万人以上が不服審査請求を行う事態になるなど、高齢者の生活は逼迫している。4月からの消費税増税がさらに追い討ちをかける。5年前の2009年度保険料と比較すると、1人当たり平均保険料は年間約1万3,000円も値上がりしており、保険料は負担の限度を超えている

保険料値上げの最終案は、被保険者(後期高齢者)にまったく提示されないまま、広域連合議会で可決された。3月頃、被保険者に新保険料が通知される。多くの被保険者は保険料の値上げを知らず、通知が届いてから値上げに気づくことになる。

広域連合議会 当事者の意見反映されないしくみ

広域連合議会議員は、東京都62区市町村の議会の議員のうちから、議会の推薦のあった者を候補者として、区、市、町および村の区分ごとに各区市町村議会において選挙を行い、定数31人を決定している。

半数以上の自治体が広域連合議会議員を出すことができない。さらに住民の直接選挙で選出されないため、後期高齢者の意見は事実上反映されない。広域連合は、国いいなりの「保険料取り立て・給付抑制」の出先機関なのかとの批判もある。

一般市民、後期高齢者の意見を反映できるよう広域連合議会のしくみを見直す必要がある。

制度そのものが欠陥

後期高齢者医療制度は保険料収入だけでは成り立たない。2年ごとに区市町村が約200億円の一般財源を投入し続けている。

14、15年度保険料算定案は、一般財源(約226億円)を投入後の試算で、1人当たりの値上げ額が、平均約1万円であった。これに財政安定化基金145億円を投入して値上げ幅を半額に抑制した。

そもそも財政安定化基金の財源は、都道府県の拠出分を除いて高齢者の保険料に上乗せする設計になっているが、東京では保険料負担を軽減するため、制度発足以来、健診費用などとともに区市町村の一般財源から補填し続けている。

後期高齢者医療制度は一般財源の投入なしでは存続できない医療保険制度なのだ。

後期高齢者が増え、医療費が増大すれば、広域連合は「保険料の値上げ」か「医療内容の劣悪化」を選択せざるを得ない。

75歳で区切る「差別医療制度」そのものが、後期高齢者に「保険料値上げ」という「痛み」を押し付けている。国、都、各自治体が一般財源からの拠出を増やせば、保険料のさらなる軽減は可能である。制度欠陥の責任を高齢者に負わせてはならない。

協会は後期高齢者医療制度の廃止を求めるとともに、保険料の軽減のため、国と東京都に独自の財政支援を求めていく。

(『東京保険医新聞』2014年2月15日号掲載)