改定マイナンバー法・個人情報保護法が成立――個人情報を政府が管理 医療分野にも「紐付け」拡大

公開日 2015年09月15日

医療分野に新たな個人番号の導入狙う

 厚労省は5月29日の産業競争力会議で、カルテなど医療分野の情報を一元的に管理する新たな個人番号(マイナンバーとは別)を導入する方針を明らかにしている。病歴、投薬などを含む医療・介護情報がひとつの番号に「紐付け」される。2018年度から段階的に運用を初め、2020年度の本格運用を目指すとしており、マイナンバー(社会保障・税番号)とも連動させ、患者の医療情報を医療機関が共有し、医療費抑制のツールとして活用する方針だ。

特定健診と予防接種先行して「紐付け」

150915_01紐付けマイナンバー情報が漏れるのを防ぐと主張してきたが、特定健診と予防接種履歴という紛れもない医療情報を先行してマイナンバーに「紐付け」するなど、なし崩し的に利用範囲を拡大している。また、マイナンバーに健康保険証の機能を持たせることも検討されている。

マイナンバーを消費税還付に利用!?

 9月8日、2017年4月の消費税率の8%から10%への引き上げに合わせ、マイナンバー制度を活用した新たな還付金制度(軽減税率の代替制度)の財務省案が明らかになった。買い物の際、店側に個人番号カードを提示し、購入履歴をカードに埋め込まれているICチップに蓄積。軽減税率8%の対象商品の場合、2%が消費者に還付される仕組みで、上限額は年間4,000円と報道されている。国民の消費行動まで政府に把握されることになる。還付を受けたければ、買い物のたびに個人番号カードを提示する必要があり、紛失や盗難のリスクが高まると指摘されている。

個人番号カードの 受け取りは任意

 マイナンバー法では1月から交付される個人番号カードの受け取りは国民の自由だ。
 カードを所有していなければ還付が受けられない制度を現時点で提案することは場当たり的で実効性に欠ける。政府は将来、個人番号カードの取得義務化も計画しているのではないか。

生体認証の導入も検討

 改定マイナンバー法では付帯決議に「個人番号カードの公的個人認証機能の利用時における本人確認方法について、生体認証の導入を含め、より安全かつ簡易な方法を検討すること」との内容が盛り込まれた。生体認証をするための情報まで国家が管理することになれば、恐ろしい管理統制社会が出現することになる。

個人情報で金儲け

 改定個人情報保護法では、個人情報を「匿名」加工すれば、本人の同意なく企業が売買できるようになった。「匿名」加工すれば本人が特定できないという保証はない。本人同意が必要ない点だけを取ってみても、自己情報コントロール権(プライバシー権)の侵害にあたり、「個人情報保護」の名に値しない内容だ。個人情報を金儲けの対象にするものだ。
 協会はこれまで、①ひとつの個人番号にあらゆる個人情報が集約されることにより、ひとたび個人情報が漏えいすれば被害は甚大なものとなる、②「成りすまし犯罪」に対する対策は無策で、被害を防ぐ手立てがない、③個人の特性と医療情報が紐付けされた人は、就職、結婚、ローン契約、保険契約などで不利になり、健康・介護関連商品、保険商品のマーケティングの標的にされる、④インターネットに流出した情報は回収できない―などマイナンバー制度に警鐘を鳴らしてきた。
 政府はマイナンバーのさらなる利活用を計画しており、年明けの国会には関連法案が提出される見込みだ。引き続き会員への情報提供に努めていく。

『東京保険医新聞』2015年9月15日号掲載

関連ワード