Topics 進む健康の「自己責任化」

公開日 2015年04月25日


「健康は自己責任」健康長寿社会形成基本法案――今国会に提出も

超党派の「次世代の社会保障制度を構想する議員連盟」(会長・鴨下一郎元環境相)は3月27日、国会内で総会を開き、国民の健康増進に向けた施策の積極的な実施を求める「健康長寿社会形成基本法案」を取りまとめた。4月にも議員立法で国会に提出し、今国会中の成立を目指すとしている。

法案は①国、②地方公共団体、③事業者、医療保険者、医療関係者等、④国民に対し責務規定を設けている。医療関係者には「国又は地方公共団体が実施する健康長寿社会の形成に関する施策に協力するよう努める」ことが求められる。

法案は「マイナンバー制度を利用したインセンティブ導入」を掲げており、国民の自己責任で健康関連サービスを購入させ、社会保障費の削減を目指すとしている。

介護保険法4条では、要介護状態になることを予防するための国民の健康保持増進義務を定めており、健康長寿社会形成基本法案は、社会保障における国の責任を放棄し、国民に新たな自己負担と自己責任を押し付けるものだ。

安倍首相のいう「岩盤規制の打破」は、人間の生命・営みの根幹をなす分野を市場化・営利化することに他ならない。多様な健康サービスを購入できるものとできないものの格差を拡大させ、国民の健康破壊を促進する危険な法案である。

ローソン「介護コンビニ」をオープン 医療・介護の市場化進む

コンビニエンスストア大手のローソンは4月3日、埼玉県川口市の介護事業者、ウィズネットと提携し、1号店をオープンさせた。

ケアマネジャーを常駐させ、介護相談や健康関連情報を提供する施設を店舗に併設し、高齢者や家族からの相談に対応する。健康関連や生活サポート関連の商品も高齢者向けに販売する。今後3年間で30店舗まで拡大する予定だ。ローソンは介護事業者に加盟店になってもらう形での店舗展開を計画しており、2025年に向け全国展開を目指すとしている。

今次介護報酬改定に見られるように、介護事業者が介護報酬のみで事業所経営を維持していくことが困難になるなか、健康関連商品の高齢者向け販売、在宅サービスと連携した宅配などの買い物サポートの展開により、高齢者を囲い込み、介護報酬以外の収入を得ようとの狙いだ。

ローソンは病院内へ出店する「ホスピタルローソン」、調剤薬局を併設する「ファーマシーローソン」をすでに展開しており、健康の自己責任化と医療・介護の市場化・営利化の流れの一環として注視していかなければならない。

(『東京保険医新聞』2015年4月25日号掲載)