死亡診断書記入マニュアル 「法医学的異状」等は削除――医師法21条の「拡大解釈」是正へ

公開日 2015年04月15日

新版「死亡診断書記入マニュアル」

死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」の記載内容にきわめて重要な改訂が行われていることがわかった。3月25日、同マニュアルの2015年度(平成27年度)版が厚労省ホームページにアップされ明らかになった。

同マニュアルは、「2 死亡診断書と死体検案書の使い分け」に記載されている「24時間以内に所轄警察署に届出なければならない」場合について、2014年(平成26年)版では医師法21条そのものの記述がなく「外因による死亡またはその疑いのある場合には、異状死体として24時間以内に所轄警察署に届出が必要になります」との記述があり、(注)として「異状とは『病理学的異状』ではなく『法医学的異状』を指す」「『法医学的異状』については、日本法医学会が定めている『異状死ガイドライン』」等も参考にしてください」と書かれていた。

今回この(注)がすべて削除され、医師法21条を引用する簡潔な記述に変更されている。

日本法医学会の「異状死ガイドライン」には医師法21条を拡大解釈した誤った記述がされており、今回の死亡診断書記入マニュアルの記載変更と(注)の削除は、医師法21条の正しい解釈を広めるために活動してきた運動の大きな成果である。

「死亡に至る経過が異状であった場合にも異状死体の届出をすべき」という「拡大解釈」が医療界に蔓延していたが、その原因の1つが厚生労働省発行による死亡診断書記入マニュアルの記載と(注)の内容であった。

医師法21条の解釈については「医師が死体の外表をみて検案し、異状を認めた場合に、警察に届け出る」とした外表異状説が確定している。

2004年の都立広尾病院事件の最高裁判決、2014年6月10日田村憲久厚生労働大臣の国会答弁で明らかなように、わが国の司法と行政における医師法21条の解釈は一致している。

協会は引き続き、医師法21条の誤った拡大解釈による警察署への届出をなくすため、正しい解釈の普及・啓蒙活動を進めるとともに、無用な届出による医療刑事事件の立件抑制に取り組んでいく。

死亡診断書記入マニュアル新旧対照表(2015年度と2014年度の比較)

(『東京保険医新聞』2015年4月15日号掲載)